【生誕100周年】水木しげるは伝記漫画もすごかったーー隠れた名作『劇画ヒットラー』を読む

水木しげるの隠れた名作『劇画ヒットラー』

溺愛する姪、ゲリ・ラウバルの死……墓掘りシーンに水木節が炸裂

 ヒットラーは生前、異母姉アンゲラ・ヒトラーの娘で、姪のゲリ・ラウバルを溺愛していた。ゲリに自分の本の制作を手伝わせたり、自慢するため党の会合(当時、男性だけしか参加を許されてなかった)に連れて行ったりしていたようで、やがてその溺愛ぶりは過剰になり、彼女の行動・趣向を制限し始める。

 やがて、耐えきれなくなったゲリが自ら死を選び、ヒットラーは強いショックを受け錯乱するのだが、そのエピソードで登場するのが、水木漫画でお馴染みの「墓掘り」だ。ヒットラーは、ショックのあまりゲリの墓を掘り起こし、なんと自分も一緒に埋まろうとする。

 『ゲゲゲの鬼太郎』の前史に位置付けられる『墓場鬼太郎』や『墓をほる男』など、水木作品には数多く墓場エピソードが登場するが、まさか遠いドイツの独裁者を題材にした作品でも墓掘りシーンが出てくるとは……。

 従来の歴史漫画や、第二次世界大戦関連の書籍ではあり得ない切り口で、ヒットラーやナチスドイツを掘り下げた本作。世界情勢が不安な今の時代に、改めて読み返しておきたい一冊だ。

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