『アイシールド21』14年ぶりの新作読切「BRAIN×BRAVE」で蘇った情熱と、止まらない“続編”への妄想

※本稿は『アイシールド21 BRAIN×BRAVE』のネタバレを含みます。未読の方はご注意ください。

 1月29日発売の『週刊少年ジャンプ』(集英社)で、2009年6月に連載終了した人気アメフト漫画『アイシールド21』の特別読み切り『BRAIN×BRAVE』が掲載された。今現在の時代背景を汲みながらも、相変わらず『アイシールド21』らしい泥臭いストーリーだった。

 『BRAIN×BRAVE』では、戦場を高校から大学に移した小早川瀬那(セナ)らの奮闘が描かれていたが、冒頭からいきなりフルスロットル。セナが所属する炎馬ファイアーズと、セナの憧れであり最強のライバル・進清十郎が所属する王城大学の、全日本大学選手権の関東代表をかけた試合のクライマックスから始まる。デビルバットゴーストを出すセナに対して、進はトライデントタックルで迎え撃つ。セナはジャックしてしまうが、雷門太郎(モン太)がボールをキャッチしてタッチガウンを決めて勝利。蛭魔妖一(ヒル魔)率いる最京ウィザーズが待つ、大学日本一を決める“甲子園ボウル”へと駒を進めた。

セナの覚悟

 後日、セナ達は炎馬ファイアーズの部室に向かうとそこにはヒル魔がいた。さらには、ワールドカップで対戦したアメリカ代表のメンバーであり、現NFLプレイヤーのドナルド・オバーマン(Mr.ドン)の姿も。Mr.ドンはセナとヒル魔が甲子園ボウルで対戦して勝ったほうに、NFLチームの外国人練習生として招集することを告げるために訪れたという。

 一方、ヒル魔はセナに対する宣戦布告でやってきた雰囲気。2人で歩く帰り道、ヒル魔は「俺がテメーに勝って頂点のプロに行くからな」と言うと、セナは「でも勝つのは僕だ」と堂々と言い切る。2人のバチバチの舌戦を見せたすぐ後、炎馬ファイアーズ対最京ウィザーズ戦がスタート。これまたゲームはクライマックス。ラスト1プレーという土壇場の攻防が繰り広げられた。

 「でも勝つのは僕だ」のセリフから、セナの気持ちが痛いほど伝わった。航空券を破ってデスマーチの参加を表明して「小早川セナ 21番!」「ポジションはランニングバックです!」と言った時、巨深ポセイドン戦の終盤でヒル魔から筧駿を抜けるか聞かれて「抜けます」と答えた時など、セナは声を荒げないながらも内なる闘志を込める言葉を発するシーンが多い。吹き出しは大きいが、文字自体は小さく、感情が凝縮されているような演出。覚悟を決めた表情も相まって、セナのセリフは重みを感じずにはいられない。このシーンでも“ヒル魔にタメ口をきく”という成長だけではなく、セナらしさも感じられた。

『BRAIN×BRAVE』の意味

 『BRAIN×BRAVE』では懐かしいキャラ達のぶつかり合いだけが見どころではない。2009年6月に連載は終了しているとはいえ、時代背景は現代となっている。NFLでも使用されている、選手の能力を測定する“RFIDチップ”が登場したり、AI解析によってチームに必要な選手のタイプを割り出したりなど現代的な描写が並ぶ。

 エンターテインメントやショッピングの分野でも、AIによるレコメンド機能により、人間は考える機会が減った。炎馬ファイアーズ対最京ウィザーズでもAIが「最適解」を導き出すシーンが出てくるが、それに頼らず、変化や挑戦を恐れずに立ち向かうセナとヒル魔の勇姿が見られた。悪魔的な知能を持つヒル魔と、屈強な相手にも勇敢に勝負を挑むセナがぶつかり合い、『BRAIN×BRAVE』というタイトルにふさわしい内容だ。

 年を重ねて何かに情熱的になることは減ったが、連載していた10数年前を思い出す、泥臭くて暑苦しくて最高の読み切り漫画だった。

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