手塚治虫『新選組』なぜドラマ化? 萩尾望都も影響を受けた、知られざる“時代劇短編”の内容

手塚治虫の隠れた名作『新選組』ドラマ化

短い作品ゆえ、単行本が売りやすい?

 それにしても、手塚の隠れた名作とはいえ、なぜ今『新選組』のドラマ化なのだろうか。SNSでもいろいろな憶測が飛び交っているが、ひとつの要因として、「単行本を売りやすい」というのは重要なポイントではないだろうか。

 『新選組』は1966年にコダマプレスから単行本が刊行されているが、講談社の『手塚治虫漫画全集』や『手塚治虫文庫全集』でも1巻分である。そう、打ち切りになってしまったせいで、長すぎず、読みやすいので、単行本を手軽に買いやすいのだ。それでいて、感動的な物語なのである。これで人気が出ないわけがない、といったところだ。

 手塚は短編、読切の名手であり、良質な作品を山ほど残している。これを機に今後も手塚作品のメディアミックスが続々進んで欲しいなと願う。個人的には『るんは風の中』や『山太郎かえる』などは、改めてアニメ化してもいいのではないかと思うのだが。手塚が人気漫画家としてノリノリだった1950年~60年代の初期作品にも名作が数多い。

 手塚没後のメディアミックスの傾向を見てみると、『鉄腕アトム』や『ブラック・ジャック』などのメジャー作品やキャラクターは多方面で活用されてきたと思うが、それ以外の短編に光が当たる機会は少なかったといえる。そういった意味で、『新選組』のドラマ化は画期的な出来事であり、埋もれた手塚作品の掘り起こしにも期待したいところである。

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