『キャプテン翼』43年の歴史に幕ーー必殺シュートから”指南書”まで、印象的な「キャプ翼語」を振り返る

印象に残る“キャプ翼語”といえば?

 1981年の連載開始から長期に渡りファンに愛され続けているサッカー漫画『キャプテン翼』の連載終了が、先日作者の高橋陽一先生により宣言された。

 日本サッカー黎明期から主人公の大空翼を通じて「日本をワールドカップで優勝させる」という明確なビジョンを掲げ、作品を通じて日本サッカー界に多大なる貢献を果たした『キャプテン翼』が終了してしまうことは正直に言って淋しい。しかしながら、高橋先生はファンに向けたメッセージの中で『キャプテン翼』最終回までの構想をネームという形で残すことを考えている、との発表もあり、今後何らかの形で真のゴールまでの物語が読者に届けられる可能性は大いにある。ファンとしては夢の続きを見られる、希望に溢れた発表でもあったのではないだろうか。

 そこで本記事ではこれまで日本のみならず世界中に影響を与えた本作品の、特に印象的なワードを振り返りながら作品の歴史を紐解いていきたい。『キャプテン翼』には、聞けばキャラクターやシーンがありありと目に浮かぶキャッチーな言葉が多いのだ。

大空翼の代名詞「ドライブシュート」

 まずは主人公の大空翼が中学生時代に習得した「ドライブシュート」を挙げたい。誰しもが1度はこのシュートをマネして練習に励んだ経験があるのではないだろうか。

 ボールに強烈なドライブ回転をかけ、ゴールバーのはるか上空から急激に下降する、これぞ大空翼の代名詞、といえる必殺シュートだ。一般的なサッカー用語としても使われるが、ただ「縦回転で落ちるシュート」というだけでない“必殺感”が漂うのは、『キャプテン翼』の影響に他ならない。

 中学生の時点でこのシュートをマスターした大空翼は驚異的だが、その後、作中では心臓病のハンデを抱えながらプレーする、ガラスのエース三杉淳や『キャプテン翼ワールドユース編』でリアル・ジャパン・7の一員として登場した弓倉宣之等多くの選手がドライブシュートを使いこなしていたことも印象深い。作品を象徴するワードのひとつで、“キャプ翼語”と言っても差し支えないだろう。

誰もが度肝を抜かれた「スカイラブハリケーン」

 続いては大空翼のライバルとして登場した双子のサッカー選手、立花兄弟が編み出した大技「スカイラブハリケーン」を紹介したい。

 一方が仰向けになり背中で芝を滑りながら発射台となり、もう1人が両足の裏の上に乗ってドッキングした状態で勢いよくジャンプし、遥か上空に舞い上がり超滞空ヘディングシュートを行う超絶難易度のスゴ技である。

 厳密に言うとサッカーのルール上は反則だが、最早そんなことは大きな問題ではない。そのプレイとネーミングのキャッチーさ。多くの読者が驚き、憧れ、そして皆脱落していったこの超必殺技にこそ『キャプテン翼』の魅力が詰まっていると言えるのではないか。

キャプテン翼ファンにはもはやバイブル「ロベルトノート」

 翼をおいて1人ブラジルに帰ってしまった翼の師匠であり元ブラジル代表ロベルト本郷が残した、ロベルト自身がこれまで体験してきたサッカーのエッセンスが全て詰まった大空翼専用のサッカー指南書、それが「ロベルトノート」だ。

 その全容を窺い知ることはできないが、作中では度々ロベルトノートの一節が紹介されている。サッカーを通じて学びを得ることの出来る人生の教科書ともいえる存在だ。

 ここでロベルトノートの52ページに記された「サッカーの自由さ」について語られているシーンにも触れておきたい。それは、以下のような趣旨の内容だ。

 なぜサッカーはこんなにも楽しいんだろう。それは、最も単純で、最も自由なスポーツだからじゃないか。ボールを持ったら、何をしてもいい。ドリブルをしても、パスをしても、シュートをしてもーー。 

 自由なサッカーを愛するロベルト本郷が、翼にもその自由さを誰よりも楽しんで欲しいと送ったメッセージは、そのまま『キャプテン翼』という作品が読者に届け続けているメッセージそのものではないだろうか。

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