読者家注目、青崎有吾も好むシャーロック・ホームズ 今とは全く異なる“世界一有名な探偵”の初期キャラ像

シャーロック・ホームズの初期キャラ像

 2023年6月からヤングジャンプで連載が開始された『ガス灯野良犬探偵団』は、シャーロック・ホームズシリーズに登場するベイカー街遊撃隊(ベイカー・ストリート・イレギュラーズ)の少年たちを主人公にした珍しい視点で描かれている。

  ベイカー街遊撃隊は尾行や情報収集などの形で名探偵シャーロック・ホームズに協力するストリートチルドレンだ。

  ネットフリックスオリジナルのネット配信ドラマ『ベイカー街探偵団』も同じく、ストリートチルドレンを主人公としているが、『ベイカー街探偵団』の少年たちは『ガス灯野良犬探偵団』に比べると年かさであり、加えて超常的な犯罪が起きるというオリジナルのシャーロック・ホームズには無い要素が足されている。

 『ガス灯野良犬探偵団』はオリジナルの雰囲気を残すサスペンスであり、少年たちの年齢ももっと低い。

  原作者の青崎有吾氏は自作の小説『アンデッドガール・マーダーファルス』にもホームズを登場させており、よほどホームズが好きらしい。リアルサウンドブックで行っていた早乙女太一との対談でもドラマ版の『SHERLOCK』の影響についても言及している。

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 『ガス灯野良犬探偵団』のホームズはまだ開業したばかりの無名の存在という原作には描かれていない「可能性」の姿で設定されているのもマニア心をくすぐる。(ただし、ホームズが少年に平然と暴力をふるう姿は賛否分かれそうである。シャーロック・ホームズ教の信者は信仰上の理由で拒否反応を示すかもしれない。筆者もその気持ちはまぁわかる)

  さて、シャーロック・ホームズシリーズの作者コナン・ドイル(1859–1930)は100年近く前に鬼籍に入っており、当然ながら彼の生みだした世界一有名な探偵シャーロック・ホームズはすでに著作権保護期間が切れている。

  しかし、その知名度は絶大かつ、多くのファンを抱えており、ホームズが登場する商業作品(いわば法的に許された二次創作)は毎年のように発表されている。

  舞台を21世紀の現代に置き換えたテレビシリーズ『SHERLOCK』、『エレメンタリー ホームズ&ワトソン in NY』、現代の日本に置き換えた『シャーロック アントールドストーリーズ』、現代の日本に置き換え性別も転換されている『ミス・シャーロック/Miss Sherlock』、19世紀末の香港に舞台を移した『辮髪のシャーロック・ホームズ 神探福邇の事件簿』、架空のSF的な世界に舞台を転換した『歌舞伎町シャーロック』など、原作の姿(舞台は19世紀末から20世紀初頭のイギリス)からかけ離れたものも少なくない。

  では、その原型もあやふやなほどアレンジされ放題なシャーロック・ホームズは元々どのような姿だったのだろうか?  今回は「ほんとうのシャーロック・ホームズ」の姿について考察をしてみたい。

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