『進撃の巨人』は“大人”も活躍する物語だった……ひっそりと世界を救った影のヒーローとは

『進撃の巨人』は“大人”も活躍する物語

未来への希望を育てた英雄、キース・シャーディス

  もう1人の偉大な大人として、104期生の恩師にあたるキース・シャーディスの名前も挙げておきたい。彼は「訓練兵団」の教官を務める人物で、鬼教官と呼びたくなるような厳格さで知られる。入団式の最中、芋を食い始めたサシャを見咎め、「死ぬ寸前まで走れ」と罰を与えたのも他でもない彼だった。

  有望な戦士たちを数多く鍛え上げたシャーディスだが、終盤では微妙な立場に置かれるように。イェーガー派が反乱を起こし、兵団支部を乗っ取る事件が起きた際、フロックに扇動された訓練兵たちによってリンチを受けてしまう。

 「ひよっこたち」と挑発した直後に地面に倒れていたため、この場面はギャグのようにも見えるのだが、実際にはシャーディスなりのやさしさが表れた名シーンだった。あえて暴行を受けることで、訓練兵たちがイェーガー派の逆鱗に触れることを避けようとしていたからだ。その後、イェーガー派に寝返った元訓練兵が巨人に襲われているところに現れ、立体機動装置によって救出する活躍も見せている。

  さらにアルミンやライナーたちが「地鳴らし」を止めるために行動を起こした時には、ひそかに彼らが港を出発できるようにサポート。イェーガー派の増援を食い止めた上で、テオ・マガトと共に身を呈して巡洋艦の爆破を行なった。

  シャーディスの行動がなければ、アルミンたちが港を出ることは不可能だったそうで、マガトからは「あんたは後に世界を救った英雄の1人となるだろう」と称賛されている。

  なお、シャーディスにも未熟な時代があり、「調査兵団」団長としての失敗や、エレンの母・カルラとのすれ違いなども描かれていた。エレンの身を案じ、姿勢制御の試験で立体機動装置に細工を施したことも印象深い。あるいはそんな人間味あふれる人物だからこそ、精神的な成長が胸を打つのかもしれない。

 「地鳴らし」を止めて世界を救ったのはアルミンたちの功績となったが、その裏にはピクシスやシャーディスなどの足跡がたしかに刻まれている。決して派手ではないが、歴史に残らない英雄たちの活躍があったことを忘れるわけにはいかないだろう。

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