『東京リベンジャーズ』天竺編を彩った黒川イザナと鶴蝶の絆ーー“王と下僕”の物語を振り返る
最後まで手を取り合うふたり
「王と下僕」だなんて関係は、ちょっとしたことで崩れ去りそうなイメージがある。下僕が王に逆らって……や、王が下僕を突き放して……なんてことは物語でよくある話だが、2人は兄弟で親友。あくまで王と下僕は肩書きでしかなく、ホンモノの絆で結ばれているため最後――いや、“最期”まで手を取り合った。
お互いに黒い感情を持たないからこそ鶴蝶はイザナを説得し、イザナは鶴蝶を庇った。心の底からの素直な気持ちがそのまま行動へ反映されたのだ。どちらかが不満、反逆、裏切りといったことを考えていれば、衝撃的なシーンで相手を思いやるなどは絶対にできないはずだから。
「オレにはオマエしかいない」「寂しい思いはさせない」ーーこのセリフに“主従”なんて言葉は似合わない。どこまでいってもイザナと鶴蝶は兄弟で親友、天竺が負け、敗北を知ろうが関係が崩れることはなかった。
手を取り合って成長を続けた2人には相応しい結末である。鶴蝶が握った手の温もりを感じながら息を引き取ったイザナ、下僕“たち”に看取られながら逝く王は美しい最期を迎えるのだった。
孤独な人生を歩んだ2人だが、結局のところ独りぼっちではなかったということ。イザナが強くいられたのは鶴蝶のお陰でもある。最期に「絆」を再確認したまま永い眠りについた大将は、“救われない人”ではなかったということだ。