『東京リベンジャーズ』天竺編を彩った黒川イザナと鶴蝶の絆ーー“王と下僕”の物語を振り返る

『東リベ』黒川イザナと鶴蝶の絆

※本稿は『東京卍リベンジャーズ』のネタバレを含みます。原作未読の方はご注意ください。

 アニメ『東京リベンジャーズ』の3期となる「天竺編」が12月26日、最終回を迎えた。今期で深い印象を残したキャラクターといえば、天竺総長の黒川イザナ。そして、イザナを本当の意味で“孤独な王”にしなかった鶴蝶という“下僕”の存在も大きかった。本稿では、そんな“王と下僕”の関係性を振り返りたい。

文字だけを見ると恐ろしい「下僕」という言葉

 2人が知り合ったのは小学校のころ。親を亡くした鶴蝶が住宅街の片隅で、亡くなった両親のお墓を作っていた時にイザナが声を掛けた。

 当時小学校低学年の鶴蝶が作る、小さなお墓を蹴り飛ばす大将の画は衝撃的だ。けれどもイザナはただ彼をいじめに来たのではなく、現実を理解させるために現れたのだ。発される言葉はかなりひねくれていたものの、鶴蝶にとってはこの出来事が救いとなる。

 イザナが王で、鶴蝶が下僕。「オレの下僕として生きろ」だなんてインパクトの強いセリフだが、身寄りのない者同士で共鳴する“何か”があったのだろう。鶴蝶はイザナが強引に生きる理由をくれたことに感動し、戦いの駒としての忠誠を誓った。

イザナから見た鶴蝶の存在

 イザナはただ「下僕」を欲していただけなのか? この質問に対する答えはきっと「No」だろう。

 鶴蝶と出会った時、イザナはまだ出生の秘密を知らず、真一郎との関係も良好で、不良のチームを作るなどは頭になかったはずだ。「一つの国を創りたい」だなんて子どもらしい夢を掲げていたものの、何もかも言うことをきくだけの下僕が欲しかったわけではないのである。

 ずっと孤独だった彼は、いつでもそばにいてくれる友達を作りたかったのが本音。口は悪いが、根底にある感情はいつだって素直だ。生意気な態度とは裏腹に、一緒に遊べる相手ができたのはとても嬉しかっただろう。それに、独りぼっちの鶴蝶を自分に重ね合わせ、放っておけなかったのも声を掛けた理由のように見える。

 それぞれが成長し、不良の道を進んでからも鶴蝶は特別な存在だった。鶴蝶は王のために動き回る立派な“下僕”となったが、どこまでいってもかけがえのない友達であることに変わりなく、口には出さずともイザナは幼少期の出会いを大切にしていたように感じる。

 イザナにとっての鶴蝶は下僕であり、仲間であり、親友、そして大切な弟のようなもの。心の片隅でそう思っていなければ稀咲が向けた憎悪から、彼を庇う命懸けの行動には至らないからだ。

鶴蝶から見たイザナの存在

 幼き鶴蝶からすると年上のイザナは少々怖くも感じる相手。でも独りぼっちの彼にとって「王」の登場は曇った心を晴らすきっかけとなる。“肩書き”は下僕でも、実際はお兄ちゃんのような存在のように思えただろう。イザナは真一郎を唯一の救いとしたからこそ、同じことを鶴蝶にしてあげたかったのかもしれない。

 次第に2人は親密な関係となり、孤独を極めた者同士で時代を創るべく奮闘する。主従関係を結んだまま、鶴蝶は裏切ることなくずっと傍に居続けた。

 幼き頃の約束なんて、時間の経過と共に忘れてしまうもの。それに自我が芽生えてくれば反発し、袂を分かつ日が訪れてもおかしくはない。

 けれども鶴蝶から見てイザナは自分に手を差し伸べてくれた友であり、兄。感謝の気持ちと尊敬の心が、忠誠を誓い続けられる理由だ。

 鶴蝶は“真のイザナ”を知っているため、彼が道を踏み外しても離れることは絶対にしない。変わりゆく王を目にし、複雑な感情に駆られつつも逆らうことなく自分の正義を貫くのは、イザナがかけがえのない存在だったからに違いない。

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