漫画ライターが選ぶ「2023年コミックBEST5」若林理央編 『いやはや熱海くん』など新しい風を吹かせた作品

「2023年コミックBEST5」若林理央編

ある事件が、ふたりの少女を結び付けた……予想外の結末まで見逃せない

 新進漫画家の東洋トタン初の連載作『ラストサマー・バケーション』は、ヤングケアラー、ネグレクト、親子の依存など、現代の問題をも扱ったサスペンス漫画である。共に家庭の問題を抱えながらも、明るい美月と、友人のいない無口な海野は正反対の少女だった。ある大きな事件が起きるまでは。

 このふたりの少女の運命は交差して、友情とは呼べない関係性を構築する。その過程と予想外の結末を迎えるまでの展開が、上下巻の2冊で怒涛のように描かれながらも、ラストまで決して不自然ではない。少女たちの心理によって、時に暗く、時に光に満ちた描写は、作者が作画でこだわっている点だろう。次回作も楽しみだ。

輝き続ける日本のカルチャー「漫画」

 コロナによる外出自粛で、日本が誇る漫画というカルチャーはますます注目を浴びた。そして自粛が終わっても、その輝きは衰えることがない。2023年、1巻(もしくは上巻)が単行本化された漫画にしぼって5冊選んだが、ランキングは難しい作業で、どれも等しく私の胸をうった漫画である。この年末年始にぜひ読んでみてほしい。

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