『ジャンケットバンク』人気を支える愛されキャラ? 悪役から一転、読者を魅了した獅子神敬一に迫る

『ジャンケットバンク』獅子神敬一の魅力

 話題のギャンブル漫画『ジャンケットバンク』。2023年7月時点で連載は4年目を迎え、アニメ化間近と囁かれる人気作だ。

 熱狂的な支持を得る理由はストーリーの面白さだけではなく、ギャンブラーをはじめとした登場人物たちにある。全員「普通」の域を遥かに超えた思想と精神力を持ち、読者の意表を突く言動には毎度驚かされる。

 超個性派な面々が揃うなか、嫌う読者はいないといっても過言ではないほど、絶大な人気を誇るキャラクターがいる。常識人寄りで人間らしい、獅子神敬一(ししがみけいいち)だ。本稿では作品の内容とともに、獅子神のキャラクター性について解説したい。

ギャンブル漫画界の新生『ジャンケットバンク』

 そもそも『ジャンケットバンク』は、週刊ヤングジャンプにて2020年7月より連載が始まったギャンブル系漫画。舞台である「カラス銀行」は裏で巨大な賭場を開き、数々のギャンブラーを管理しながら運営する市中銀行だった。

 その事実を知らずに働く窓口担当の御手洗暉(みたらいあきら)は自身の能力を思う存分発揮できず、味気無さを覚える毎日。変わらぬ日々を送り続けていると、ある日「特四(トクヨン)」と呼ばれる部署に異動を命じられる。

 新たな部署の上司・宇佐美銭丸(うさみぜにまる)より銀行の真の姿を見せられ、戸惑う御手洗。けれども正体不明のギャンブラー真経津と出会うことで世界が一変。御手洗は特四のメンバーとして真経津を担当し、時に熱く激しく、時に残酷な現実へと巻き込まれ、魅了されていく。

 本作は御手洗と真経津、2人の主人公で物語を展開。銀行員とプレイヤーどちらの視点からも描かれるため、読者が置いてけぼりにならない描き方には定評がある。

初登場時の獅子神はまさに“嫌なヤツ”

 本作のギャンブラー達はそれぞれ所属する階級が異なり、下から5スロット、4リンク、1/2(ハーフ)ライフ、1ヘッドと4つに分類されている。同じランクで対戦をすることがルールであり、獅子神は4リンクの敵として真経津の前に現れる。

 タレ目に金髪、整った顔立ちに高身長。ガタイが良く、相手を圧倒させるような「イイ雰囲気」を持った男。しかし、性格は極めて最悪。ゲームに負け、負債を抱えたギャンブラーを買って奴隷に仕立て上げ、自身を王と崇めさせる非道な行いを続ける。狂った賭場にはある意味相応しい人間だが、一般的な概念で考えるなら絶対に近づきたくない人間だ。

 ただ、曲がった性格の裏にはちょっとした事情がある。実は獅子神という男、本当はかなりのビビリさん。そこそこの実力を持つにも関わらず4リンクに留まり、強い敵とは戦わずに安パイを取り続けていたのだ。

 臆病が高じ、自身を守るために振舞った結果が全ての歪みということ。真経津との対戦「気分屋ルーシー」ではイカサマをしてまで勝利を掴もうとするが、簡単に手の内、そして心の中までを見破られてしまう。ゲームの厳しいペナルティを受け、彼は敗北を知る。

 ただ彼との出会いが心を改めるきっかけとなり、ペナルティで負傷した傷跡を戒めとして残すことに。元の純粋さと繊細な一面が垣間見えた瞬間である。初登場時は完全に嫌なヤツだが、ゲーム終了時には読者が抱く印象が大きく変わったことだろう。

再登場でキャラ変?面倒見の良さに読者がノックアウトされた

 一回ポッキリの登場かと思いきや、しばらくして再登場を果たす。次に真経津の前に現れた時にはお互いが打ち解けた様子を見せ、以前のようなピリつきは皆無。真経津のコミュニケーション能力の高さに驚かされ、同時に獅子神の真の柔らかさを知る面白い回だ。

 その後もことあるごとに登場し、ギャンブラーの村雨や黎明(レイメイ)とも交流を持つ。いずれにせよ全員が真経津と対戦したライバルという事実に変わりないが、しょっちゅう誰かの家に集まり、学校のクラスメイトかのようにはしゃぐ姿はとても愛らしい。

 獅子神は非常に面倒見が良く、破天荒なメンバーをうまくまとめる存在へと成長した。料理が得意で、ギャンブラー達のお世話係になりつつある。

 初期の嫌みったらしい彼はどこへ……?なんて思ってしまうが、きっとこれが本来の姿。あくまで臆病さが彼を歪めてしまっただけで、生まれながらの悪人ではないからだ。

 読者の間では「お母さん」と囁かれるほどの面倒見の良さ。初登場時のギャップと見事な振り回されっぷりに、ノックアウトされるファンは多いらしい。狂った人間から常識人キャラへの移行が何よりも面白い人物と言えよう。

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