『カイジ』シリーズの盛り上がりは彼らのおかげ? 人間味のある“小物クズ”たちを考察

 1996年に「ヤングマガジン」で連載がスタートし、現在も根強い人気を誇るギャンブル漫画『カイジ』シリーズ。狡猾で容赦ない悪役も魅力的だが、特別な能力はなく、しかし人間味のある“小物クズ”たちも作品になくてはならない存在だ。本稿では、『カイジ』シリーズに登場した愛すべき(?)クズたちを紹介したい。

全ての元凶? 最序盤に登場した「古畑」

 まずは「第1章:希望の船」に登場した古畑に触れたい。借金を返済するため、ゲームが行われる豪華客船・エスポワール号に乗ることになったカイジ。そもそもその借金は、バイト先が同じだった「古畑」の保証人になったために生じたものである。カイジの自己責任……と言えばそれまでだが、彼の人の良さに付け込む古畑はまごうことなきクズだ。

 そして、「限定じゃんけん」が繰り広げられているエスポワール内のエリアで、カイジはそんな古畑と邂逅を果たす。トイレに入る古畑を見かけ、カイジは後を追うと、そこには負けを重ねて泣きじゃくる古畑の姿があった。

 古畑はカイジを見るなり謝罪するが、勝ち筋を見出そうとしているカイジは、全ての元凶である古畑を前にしても冷静に対応。古畑を責めず、古畑と安藤を仲間に加えて3人で戦うことを決意する。正直、読者としては古畑に膝蹴りの一つでも入れてほしかったが、カイジは個人的な感情よりも勝利の道筋を検討することに集中しており、博徒としての素質を早くも覗かせていた。

 しかし、人間の本質は簡単には変わらず、古畑はこの後もクズムーブを連発。一度クールダウンするためにトイレに行ったカイジの隣で古畑も用を足し、「なんか希望が湧いてきました」と話す。悪びれもせず、自分がハメた人間にそんな言葉を口にできるのも、よく考えればなかなかのものだ。

 また、古畑が呑気に連れションしたために、古畑よりも上位ランクのクズである安藤は勝手に勝負を始めてしまい、結果的には星1つと残り1枚だった「パー」のカードを失うことに。安藤のこのクズムーブを受け、古畑はカイジに「こいつもう切りましょうよ」と非情な提案を持ちかける。古畑の言い分は最もではあるが、「誰が言ってんだよ」という気になった。

 この言動からもわかるように、古畑はどうにも気分屋らしく、「第1章:希望の船」のクライマックスでは、安藤にそそのかされ、カイジを救わずに「限定じゃんけん」で獲得したお金を山分けすることを決断。どうにもこうにも流されやすく、“巨悪にはなれないクズ”という印象が残った。

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