「最強王図鑑」「5分後に意外な結末」などヒットシリーズ続々! Gakken名物編集者が語る、子ども心の掴み方

Gakken名物編集者が語る、子ども心の掴み方

マーケティングよりも、小学生の“目黒くん”と共に

――目黒さんは、もともと高校生向けの学習参考書の編集者としてキャリアをスタートされたんですよね。これまで、就職対策本や実用書など、様々なジャンルの本を手掛けられているとお聞きしました。

『新恐竜 絶滅しなかった恐竜の図鑑 児童書版』

目黒:そうですね、常に恐れていることがあって。それは何かひとつのジャンルを突き詰めて「やりきった」みたいな感じになってしまうことなんです。そうなると「バーンアウト(燃え尽き症候群)」になりそうで(笑)。もともと編集者になりたいと思ったきっかけとなった、思い入れのある本『新恐竜』『アフターマン』を児童向けにリメイクして発刊したときでさえ、他の本を作ったときと同じくらいの達成感でした。

 おそらく最終目標として、そこに到達するよりも、その道すがら「こんな切り口もあるな」「こういう方法もあるんじゃないか」って工夫していくことが楽しいタイプなんだと思うんですよね。僕の仕事のやり方は、設計図の通りに作る美しい建築物ではなく、まるで九龍城みたいに増築を重ねていく感じ。だから、たとえ思ったようにならなかった本があったとしても、その失敗の上に積み重ねていくことができるんです。逆にいえば、一度失敗したら「こっちはやめておこう」っていう判断材料を手に入れられる。だから、過去に出した本を「今の自分ならどうするか……」という視点で作り直す作業などは大好きなんです。

――たくさんの本を担当してお忙しいはずなのに、改定作業まで!

目黒:あまり忙しさは感じないです。たぶん、一般的な方法論の「マーケティング」をしないのも大きいと思います。というより、できないっていうのが正しいのかな(笑)。本の中にアンケートハガキも入れないですし、その時間や手間を次の本を作るほうに向けてしまっています。

 実際に、アンケートをとったとしても「思ったよりも低学年の子どもたちに読まれているから、続刊では言葉遣いをかみくだこう」なんて思わないですしね。今の形で売れているのに、わざわざ変えていく必要は全然ない気がするので。今は「マーケットイン」みたいな言われ方をしていますけど、僕は完全に時代遅れの「プロダクトアウト」(笑)。でも、まずは面白いと思うものを作ってみようというスタンスが、「児童書」には合っていたのかもしれないです。

――なるほど。その挑戦の数の多さが、冒頭でも仰っていた「本それぞれにある期待」と繋がってくるんですね。

目黒:はい。『ミステリと言う勿れ』という漫画はご存知ですか? ネタバレになったら申し訳ないんですけど、あるシーンで、「子どもをもったことのないお前に親の気持ちはわからないだろう(意訳)」的なことを言われた主人公の整くんが「僕は子どもを持ったことはないですが、子どもだったことはあります」と言うんです。そのセリフがすごく心に響いたんですよね。

 僕を含めて児童書を作るすべての大人が、みんな子ども時代を過ごしてきているわけじゃないですか。ビジネスとしてはわからないけれど、読者としての視点だったら「あのころの自分だったら面白いと思うかな」みたいな本質的な部分は、変わらないんじゃないかなって。「今の子どもたちに何がウケるんだろうか……」なんて頭を抱えてる暇があったら、本を作ってしまったほうが早い。あえてマーケティングなんてしなくても、子どものころのことを思い出せばわかるはずだと。だから、理想はこれなんです。

――この写真は、目黒さんですか?

目黒:はい。同窓会のときに配られた小学生のころの僕です。見た目は大人になっているけれど、仕事をするときの自分はいつもこの6年1組の“目黒くん”でいたいなって。

 その上で思うんですけど、うちの会社(Gakken)って、堅くて真面目な学級委員長みたいなイメージだと思うんですよね。大人たちからは好かれるけど、同級生たちからの人気があるかと言われると「うーん」みたいな。僕は、もっとそういうイメージも変えられるような本を作っていきたいんです。「学研くんって面白いやつじゃん」って一目を置かれるような。実際の小学生のときには、大人しい人間だったんですけど、本当は「人気者」になりたかったんです。小学生の頃は、「頭がいい」より「面白い」ほうが絶対に人気者になれますからね。

 そのためにも、真面目な参考書も作ってるけど、こんな面白い本も作ってるよっていう幅を出していけたらなと考えています。そこで、これまでよりももっと柔軟にいろんなアイデアを形にできるようにしたいんです。それは、社外からも大歓迎で。出版業界なんて小さな世界なので、手を取っていける会社とは、もっと一緒にやっていきたいなと。

 会社によって得意不得意もあります。いい企画はあるのに児童書をなかなか出すことができない会社ならうちから出してもいいですし、うちのコンテンツを他の会社から出してもいい。

 そうして業界全体が手を取り合って面白い本をたくさん出していくことで、子どものころから大人になっても、ずっと地続きで「本って面白い」という世の中にしていけたら……。こんなに楽しいことはないと思うんです。

■関連情報
「最強王図鑑」シリーズ公式:https://gakken-ep.jp/extra/saikyououzukan/
「5分後に意外な結末」シリーズ公式:https://gakken-ep.jp/extra/5fungo/

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