「最強王図鑑」「5分後に意外な結末」などヒットシリーズ続々! Gakken名物編集者が語る、子ども心の掴み方

Gakken名物編集者が語る、子ども心の掴み方

目指すのは、本だからこそできる新しいフォーマット

『水中最強王図鑑』

――トーナメント方式で対決する組み合わせもまた絶妙ですよね。「どっちが勝つんだろう」と大人も思わず考えさせられるというか。

目黒:そういったところから、親子のコミュニケーションが生まれてくれたらいいなという気持ちもありました。以前、『水中最強王図鑑』でシャチとメガロドンという絶滅種のサメを戦わせてシャチに軍配を上げたところ、編集部に「“メガロドンが負けるわけない!”と、うちの息子がどうしても納得してくれない」という、問い合わせの電話がかかってきたことがあって。サメというのも、子どもたちから絶大な人気を誇る生物なんですよね。なので、この戦いではシャチが勝つというのが、どうしても嫌だったようなんです。

――その電話にはどう対応されたんですか?

目黒:そのときは骨格をもとに親御さんに説明しました。シャチは哺乳類だから肋骨があって、内蔵が守られているんです。一方で、サメというのは軟骨魚類なので骨も細くて柔らかく、内臓がむき出しの状態。なので、ちょっとでも体当りされたら大ダメージを受けてしまうから、戦ったらシャチのほうが強いんだよ、と。それでも電話口の向こうから「(サメが負けるなんて)無理無理無理~」と泣きながら叫ぶ声が聞こえて、胸が痛かったです。

――それでも、納得しない感じが男の子っぽくてかわいいですね。

目黒:そうですね。やっぱり強そうな生物にはファンがつくというか、勝ってほしいと熱が入っていくんでしょうね。あるときは、友だち同士で「こっちのほうが強い」と予想し合って、あまりに白熱し過ぎてケンカになったこともあるらしく(笑)。それだけ夢中になって読んでくれているのも、嬉しいことです。

――1見開き目で予想して、2見開き目で勝敗がわかるという作りも絶妙だと思いました。

『5分後に意外な結末 赤い悪夢[改訂版]』

目黒:トーナメント形式を勝ち上がっていくのを体感できるようにしたいなと思っていて。編集者としては、そういうフォーマットをどう作るかっていうのがすごく考えどころだなと。「5分後に意外な結末」シリーズの中でも、色々なトライアルをしていて。基本は10ページ程度のショートショートだったんですが、1話完結の形を取りながらキャラクターを設定して1冊を通した物語も楽しめるものを出したり、「5分後」ではなく『5秒後に意外な結末』としてめくったらオチがわかるという1ページの裏表で問題と答えが完結するものを作ってみたり。「5秒後」の真逆をいって、『5億年後に意外な結末』という本も作りました。結局、編集の仕事って、そのフォーマットを作ったり、見つけたりする仕事でもあるんですよね。

 もちろん、売れたフォーマットは真似をされやすいんですけどね。似たような本が出てくると複雑な気持ちにもなるものですが、逆を言えばいろんな会社が同じような本を作ることによって、さっきお話したように棚が形成されるに至っていく部分もあって。常に生み出し続けていくことが大切だなと思っています。それに、自分でもだんだん飽きてきてしまうから、やっぱり新しいフォーマットを探すことになります。

――そうした新たなフォーマットを作り出すために、意識されていることはありますか?

目黒:本ってやっぱり物体なので、いかにモノとして親しまれるかというのは気をつけていますね。プロダクトデザイナーの方の発想などは、とても参考になりますね。たとえば深澤直人さんが作った換気扇のようなCDプレーヤーなど、直感的に操作ができる製品や、これまでの概念を覆すような作品を見ると、「すごい!」と思ってしまいます。

 「5分後に意外な結末」シリーズは中学生向けの本ということで、それをどういうふうに表現しようかと考えたとき、まずは子どもっぽくないイラストを採用したいと思いました。児童書コーナーではなかなか見ないusiさんのイラストが、大人っぽくもありながら、性別も選ばないピッタリなテイストだと考えて。造本も「ハードカバー(上製本)」だと堅すぎるから、児童書としては高級感を感じさせる「仮フランス装」にしました。「仮フランス装」は上製本の一種なんですけれど、厚紙をかませずに表紙を柔らかくできるから、オシャレな雰囲気を出せるんです。

 このご時世、やっぱり経費節減していかなきゃいけない流れもありますが、やみくもに低価格化を目指すのもちょっと違うのかなって。内容はもちろんコンテンツなんだけれど、手に取ったときの質感とか、そこにある存在感とか、全部ひっくるめて物体としてのものが本なんじゃないかと思うんです。

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