「すしざんまい!」ってどんな回? 『マイホームヒーロー』の隠れた魅力は各話のタイトル

『マイホームヒーロー』各話タイトルが面白い

 平凡なサラリーマン島栖哲雄が、娘・零花の半グレ彼氏・延人を殺害したことから始まる、予測のつかない展開が魅力の漫画『マイホームヒーロー』。その魅力の一つが、「すしざんまい!」「歌仙流おもてなし」「モテ期到来」など、緊迫するストーリーの全体像から距離のあるユニークなタイトルだ。本稿では、原作の中から気になるタイトル名とそのエピソードを紹介しよう。

第4話「すしざんまい!」

 1つ目は第4話から、「すしざんまい!」のエピソードを紹介したい。延人を殺害後に死体を分解し、その一部をスーツケースで零花の部屋から持って帰宅した哲雄。その夜、風呂上がりの哲雄に対して娘・零花はトランプを使ったハンドマジックを披露するのだが、その際に彼女がやったのが、人気寿司チェーン店すしざんまいの腕と手のひらを広げて見せるあのポーズだった。

 前話までは、殺人絡みのシーンや半グレ集団に関する描写などのシリアスシーンが多かっただけに、トランプをシャッフルし、寿司を作るように手を握ってから「すしざんまい!」とドヤ顔をキメる零花の姿はかなりシュールで、思わず「え?」という驚きの声が漏れてしまいそうになる。

 その後も、零花がリビングでR15+のスプラッター映画を観ようとする場面など、死体隠蔽を画策する父母と何も知らない娘の奇妙な家族団欒が4話の見どころとなっている。

第7話「20年目の共同作業」

 この作品では、妻・歌仙の勘の鋭さや、サポート力も哲雄の大きな支えとなる。

 特に、第7話では、不審な訪問者が来た後リビングをチェックして、TV裏のコンセントに盗聴器が仕掛けられていることに気づき、様々な危機を回避。そしてこの7話の見どころは、なんと言っても夫婦で死体を隠蔽するシーンだ。自分1人で袋に入れて自宅に持ち帰った死体の処理を実行しようとする哲雄に対して、歌仙は手を差し伸べて「1個私が埋めるから」と言い出す。

 「これが夫婦の20年目の共同作業です」「いやそれ…ケーキ入刀みたいに」という掛け合いのなか死体を隠蔽する2人。通常の結婚式で行われるケーキ入刀が夫婦で幸せになるための儀式なら、この2人が行った死体の隠蔽は、一緒に犯罪者に落ちていくための儀式とも言える。家族の絆を描く本作ならではのユニークなタイトルだ。

その他にも気になるタイトルが……

 上記の他にも、哲雄の犯行を疑う半グレ集団のメンバー・恭一が自宅に来た際に、妻・歌仙が下剤入りのコーヒーを振る舞う第24話「歌仙流おもてなし」や、零花に複数の若い男たちが接触してきて新展開を迎える49話「モテ期到来」など、言い得て妙なタイトルセンスが多い本作。今一度、ユニークなタイトルとストーリーのシンクロ度合いに注目して、読み直してはいかがだろうか?

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