『呪術廻戦』虎杖を苦しめた脹相が扱う術式「赤血操術」の強さとは?
家族のために赤血操術で戦う脹相と憲紀
作中で赤血操術を披露する脹相と加茂憲紀。ふたりは扱う術式のほか、家族想いという点も共通している。
脹相は9体の呪物「呪胎九相図」の長男として、弟を大切に想う姿が数多く見られる。呪胎九相図の2番目・壊相と3番目・血塗が殺害されたときには、手に持っていた人生ゲームのコマを破壊し怒りをにじませた。また自身に虎杖との血縁関係があることを知ると、脹相は“全力でお兄ちゃんを遂行する”ために夏油傑たちの前に立ちはだかった。
弟想いの脹相に対し、憲紀は母親想いの人物だ。憲紀の母は加茂家の中で虐められており、自分が憲紀の邪魔になることを危惧し加茂家を出た過去がある。
そのため憲紀は母親に喜んでもらうために自身の実力を広く知らしめたいという思いがあり(参考:『呪術廻戦 公式ファンブック』)、京都姉妹校交流会では“私は加茂家嫡男として振る舞わなねばならない/母様のために”と心情をあらわにしている。
兄として弟を大切に想う脹相と、息子として母親のために生きる憲紀。家族を想いながら赤血操術で戦うふたりの姿に胸を揺さぶられつつ、見方によっては血縁に縛られながら生きているようにも映ってしまう。まるで血液で対象を拘束する「赤縛」のように。
ただ、たしかなのはふたりは血縁から生じる責任や重圧を己の力に変えていることだ。
京都姉妹校交流会にて、伏黒の術式によって窮地に立たされた憲紀。そのときに彼は母親との過去を回想しながら“私は/負けるわけにはいかないのだ!!”と奮起し、形勢を立て直した。
渋谷事変のあと、弟想いの脹相と自身の兄を見下す禪院直哉が対峙した第142話「お兄ちゃんの背中」。両者の実力が拮抗した戦いのなか、勝利を収めた脹相は次の言葉を残した。
“何故俺がしぶといのか聞いたな/教えてやる 俺には手本がない 何度も何度も間違える/それでも弟の前を歩き続けなければならん/だから俺は強いんだ”
脹相の言葉は彼が兄として背負う責任を痛感できるものであろう。しかし弟想いの脹相が兄を見下す直哉に勝利した結果から、兄としての重圧が脹相の強さに還元されていることも感じ取れる。
血縁から生まれた責任を背負いつつ、その重圧を己の力に変えて戦う。血縁に縛られながらも自身の血を武器として戦う脹相や憲紀の姿から、赤血操術は負の感情や呪いを己の力に変えて戦う『呪術廻戦』らしい術式だと言えよう。
第146話「死滅回游について」で旅立つ虎杖を見届けた脹相。虎杖に笑顔で“…死ぬなよ”と声をかけ、そのあと自身の目頭を手で押さえた。これまで弟の前を歩き続けてきた脹相だからこそ、虎杖の背中を目にして、胸の内からこみ上げたものがあったのかもしれない。言うまでもないが、それは血液とは異なる、とても透き通ったものであったはずだ。
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