『HUNTER×HUNTER』連載再開に向けて考えたい“主人公の今” 我らがゴンはいつ再登場するか

※本稿は『HUNTER×HUNTER』のネタバレを含みます。

 現在休載中の人気漫画『HUNTER×HUNTER』を手がける冨樫義博氏が10月2日、約7ヶ月にわたって動きがなかったX(旧Twitter)を更新。「Start over」(やり直し)の一言とともに原稿用紙の写真を公開し、国内外のファンが沸き立った。それ以降、また動きがない状態が続いているが、いよいよ連載再開に向けて本格始動、とも受け取れるポストだ。

 「週刊連載」という形式から離れ、無理のない掲載ペースを模索しながら制作が続いてきた『HUNTER×HUNTER』。次の連載再開はこれまでにない大きな意味があり、「10話掲載→長期休載」のループから抜け出す安定的な物語の進行が期待される。そのなかで注目したいのが、長く出番のない本作の主人公「ゴン=フリークス」の扱いだ。

 ゴンの姿が最後にきちんと描かれたのは、コミックス33巻に収録された345話であり、「ジャンプ」で言えば2014年6月16日発売号に掲載された回のこと。約9年前から、ほぼ出番のない状態が続いている。最新のエピソードでは多くの陣営の利害が複雑に絡み、新キャラが山のように登場する「カキン王国王位争奪戦」が繰り広がられており、「話についていけない」という読者が散見されるが、「主人公不在」で物語の筋が追いづらい、ということも影響していると思われる。

 それではゴンはいま何をしているのか。忘れてしまった人のために振り返っておくと、仇敵・ネフェルピトーを倒すため「もうこれで終わってもいい」という覚悟で自身を無理やり成長させ、打倒を果たした激戦(いわゆる“ゴンさん”化)の後、その代償として全てを失い、一命は取り留めたものの念能力を失っている。父親のジンに「全てを捨てる覚悟で戦って普通に戻れたんだぞ それ以上望んだら罰が当たるってもんだ」と諭され、故郷のくじら島に帰って「やれること」を探すことにーーというのが、345話で描かれた最新の姿だ。

 「ゴンさん」のインパクトがあまりに強かったため、作品全体を考えれば“空気”にはなっていないが、物語の本筋には絡んでおらず、復帰が待たれるところだ。しかし、「パワーアップのための修行」ではなく、「療養」に近い形で本筋から離れているため、復帰のカタルシスをいかに感じさせるか、という問題も浮上してくる。さらに、物語の舞台は遠く「暗黒大陸」に向かう巨大船であり、合流するには、「念能力の回復→目的の獲得→暗黒大陸への渡航手段の確保」など、まだまだ多くのステップを踏む必要がありそうだ。

 ゴンだけでなく、キルアやレオリオなど、登場機会のない主役級のキャラクターは多く、381話のトビラ絵で冨樫氏自身も、ゴンに「あ、オレ 念使えないんだった」、キルアに「オレ、今どこ?」、レオリオに「出せコラ」と呟かせるなどネタにしている状況だ。それでも、計り知れないポテンシャルを持ち、異常なほど頑強なメンタルを持った魅力的な主人公であるゴンの再登場は、楽しみでならない。連載再開後、安定的に物語が進んで行くようになったとき、最高にカタルシスのある形でその姿が見られることに期待しよう。

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