『H×H』ヒソカから考える“戦闘狂キャラ”の役割 『鬼滅の刃』猗窩座や『寄生獣』後藤との共通点を探る
YouTube「ジャンプチャンネル」で1月9日、現在休載中の人気作『HUNTER×HUNTER』より「ヒソカ×クロロ」の名言をピックアップしたスペシャルPVが公開された。ヒソカを浪川大輔、クロロを宮野真守が演じるという豪華版で、ファンからも「えげつないかっこよさ」「休止期間に入ったのに宣伝されちゃうと余計見たくなっちゃうじゃないか」など多くのコメントが寄せられている。
ヒソカ・クロロはともにダークヒーロー的ポジションのキャラクターで、作品の序盤から最新の展開に至るまで、大きな存在感を示してきた。作中“最恐”の盗賊グループ「幻影旅団」の団長であるクロロは複雑なキャラクターで、現在進行形のエピソードで出自や哲学が解き明かされつつあるが、対するヒソカは比較的わかりやすい“戦闘狂”キャラクターであり、『HUNTER×HUNTER』の魅力を支えてきた功労者ともいえる。
「強いものと戦う/自らが強くなる」ことに最大の価値をおくキャラクターは、バトル漫画に欠かせないスパイスだ。突き抜ければ『ドラゴンボール』シリーズの孫悟空のように主人公としての輝きにつながるが、“欠落”が強調されたヒソカのようなダークヒーローは、「強さ」の外にあるものを求めるキャラクターの魅力を際立たせる役割を担っているのではないか。
例えば、『鬼滅の刃』で「十二鬼月・上弦の鬼」というボス級のキャラクターとして登場した猗窩座。強者を愛し、弱者を見下す猗窩座は、主人公の竈門炭治郎、そして炎柱・煉獄杏寿郎という「強さ」の先にあるものを見据えた作中屈指の熱いキャラクターと死闘を演じ、作品が持つメッセージを強調する役割を果たした。
ラスボス級のキャラクターなら、『寄生獣』の後藤は明らかな戦闘狂だ。「この種(人間)を食い殺せ」という、寄生生物としての本能に突き動かされる後藤を単純に「悪」と捉えることはできないが、結果として、赤子を守り、最後に人間性といえるものを獲得した田宮良子や、人間を「生物」としてフラットに眺めながら、宿主となる泉新一と不思議な友情を築いたミギーの魅力を際立たせる存在だった。
『ワンパンマン』のガロウも、人間の身でありながら怪人を自称し、「ヒーロー狩り」として戦闘に明け暮れたキャラクターだ。ヒーローを敵対視することになった過去が丁寧に描かれており、本来は優しい青年だったガロウ。最強の主人公・サイタマをめぐっても描かれてきた「ヒーロー(正義)の欺瞞」というテーマを体現しながら、「強さだけを追い求めることの不毛さ」も伝えており、今後の活躍も楽しみな好キャラクターになった。
現状、ヒソカはゴンをはじめとする主人公陣営と明確に対立するポジションにはなく、作中の強者を狙って荒らしていく、不穏な存在だ。ゴンが戦うべき強者になるまで“見守っている/見逃している”立場であり、再戦の可能性は高い。いつ、どんなタイミングで対峙するのか想像もつかないが、その戦いが作品全体にどんなインパクトをもたらすのか、休載中に考えてみるのも楽しいかもしれない。