アニメ版完結目前! 『進撃の巨人』がいまなお多くのファンを魅了し続けている理由を徹底解説

『進撃の巨人』がいまなお人々を魅了する理由

多くの読者の共感を得た「自由」を求める少年の想い

 ただし、こうした絵的なテクニックの話は、あくまでも小手先の技術論に過ぎない、という見方もできよう。じっさい、『進撃の巨人』の中盤以降は、ヴィジュアル面でのインパクトよりも、キャラクターたちが成長していく様子や、謎解きの面白さで物語を展開させているといえなくもない。

 だとしたら、同作がなぜいまなお多くの人々の心を掴み続けているのかといえば、それはやはり、(絵の魅力だけでなく)描かれているテーマが普遍的なものだからという他ない。

 では、その『進撃の巨人』のテーマとは何か。それは、「世界の残酷さ」をいったん受け入れた上での、自由への渇望と、未知のものに対する探究心だ。

 主人公・エレンは、子供の頃にアルミンに見せられた1冊の本を通じて、「壁の外」の世界に興味を抱き、また、自分(たち)が自由ではないということを知る。そんな彼が「駐屯兵団」でも「憲兵団」でもなく、「調査兵団」を志したのは必然のことであった。

 「調査兵団」とは、その名の通り、巨人や壁の外の世界といった未知の存在を命懸けで「調査」する組織である。

 エレンを導くメンターである歴代の団長たち――たとえば、13代団長のエルヴィンは、第72話で「知りたければ見に行けばいい」といい、14代団長のハンジは、第108話で「わからないものがあれば理解しに行けばいい」という。そして、2人とも同じようにこう続けるのだ。「それが調査兵団だろ?」

 エレンもまた、幼い頃にアルミンの瞳の中に見た「夢」の正体を確かめるために(あるいは「自由を取り返す」ために)、まずは仲間たちと壁を越えて広大な「海」を目指すのだ。結果的に彼は、世界の根源に関わるある“力”を得たのち、やむなく冒頭で述べた「地鳴らし」を決行することになるのだが、いつの時代でも「全てを知りたい」、「目の前の高い壁を乗り越えたい」という少年の想いを止められる者はいないのである。これは明らかに、大分の日田という小高い山々に囲まれた盆地で育った諫山創が、少年時代に感じていたことの表われだろう。

 いずれにせよ、この自由への渇望と未知のものに対する探究心という普遍的なテーマがある限り、『進撃の巨人』という物語は、これから先も若者たちを中心に末永く読まれ続けるのではないだろうか。

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