『進撃の巨人』もう1人の主人公、ガビ・ブラウンが見た地獄の景色……復讐の連鎖はなぜ止まらない?
※本稿はアニメ『「進撃の巨人」The Final Season 完結編(前編)』までの内容に触れています。ネタバレにご注意ください。
『進撃の巨人』の主人公といえば、言うまでもなくエレン・イェーガーだ。しかし物語途中のマーレ編から、もう1人の主人公と言うべきキャラクターが作品の舞台に上がってきた。それが「マーレの戦士」ガビ・ブラウンだ。
本稿では11月4日24時にNHK総合で放送されるアニメ『「進撃の巨人」The Final Season 完結編(後編)』に先駆けて、視聴者の心を大きく揺さぶってきたこの少女の存在について振り返ってみたい。
ガビは、エルディア人の子どもで構成された「戦士候補生」のメンバーだった少女。そもそもマーレではエルディア人が「悪魔の末裔」として迫害されており、軍隊で過酷な訓練を受け、巨人化の力をもつ「戦士」に選ばれることでのみ、まともな人権を与えられる仕組みとなっている。
そのため「戦士候補生」はいずれも戦果を挙げ、マーレに貢献することを目指しているのだが、ガビはとくに野心が強かった。優秀な成績に加えて、敵を根絶やしにする覚悟もあり、自らの命を懸けることも一切厭わない。その目的は、「鎧の巨人」を受け継ぐに値する戦士となること、ひいては「善良なエルディア人」の人権を世界に認めてもらうことにあった。
「戦士候補生」として野心を燃やすガビの姿は、巨人への闘争心を燃やす「訓練兵団」だった頃のエレンたちを連想せざるを得ない。ただ、ガビはまさにその「パラディ島の悪魔」を根絶やしにすることを目指し、逆にエレンたちは「マーレの戦士」と激しく敵対していた。
彼らの運命が交錯したのは、レベリオ区襲撃事件がきっかけだ。エレンが扇動し、レベリオ区の祭典に襲撃をかけたこの事件では、多くの人々が犠牲となる。
そこでガビは仲間や知人たちが命を落とすところを目撃し、銃を手に取って復讐を決意。そしてレベリオ区を撤退していく飛行船に乗り込み、サシャ・ブラウスを射殺した。初期から登場していた愛すべきキャラクターの退場に、仲間たちはもちろん、視聴者も衝撃を受けたことだろう。
しかしガビの歩みは、ここでは止まらない。捕虜として連れていかれたパラディ島で、カヤという少女と出会い、運命が一変するのだ。