【漫画】努力は必ずしも報われない、それでもーー「才能」について考えさせられるSNS漫画が美しい
頭に浮かんだシーンが出発点
――『あなたの右腕が欲しかった』を制作しようと思った時の状況を教えてください。
東ノ:長編を描き終えると燃え尽き症候群のように、何も描けない時期が続くことがよくあります。当時もそんな感じで、若干焦りながらも「天才と凡人の才能に絡めた話を描きたいな」とぼんやり思っていました。ある日、いくつかのキーになるシーンがポーンと出てきたので、それらを繋げるようにして全体のストーリー話を作っていきました。
――思い浮かんだシーンをつなげて制作するというのはなかなか挑戦的ですね。
東ノ:私は基本的に「描きたい!」と浮かんだシーンと、かなり曖昧な世界観を思い浮かべ、合間合間をつなげるように物語を作ります。一番最初に出てきたシーンの勢いとか、自分の中での“描きたい欲”みたいなものを殺さないように、ということは気を付けています。ですので、そこの帳尻合わせは本当に苦労します。
――2人が絶望した時の表情、そしてその絶望を打ち破って「絵を描くことが好き」ということを思い出した時の表情もインパクトがありました。
東ノ:昔、描いた作品を持ち込んだ時、「目から感情を感じられない」と言われたことがずっと記憶に残っています。ですので、目の形や瞳の中など、試行錯誤しつつかなり気を遣って描いています。眉毛の形も結構こだわっています。見せ場では「なんとか熱量を伝えられないものか」ととにかく気合を入れて描いているので、表情について指摘してもらえるのは嬉しいです。
――持ち込みの際に言われたことが、今活かされているわけですね。
東ノ:そうですね。また、表情ですが、シーンによっては1つの感情だけではなく様々なニュアンスが含まれることも多いです。「そこをどう絵に起こすか」という部分は毎回頭を悩ませています。
――作画だけではなく、思春期ならではの葛藤も見事に表現されていました。
東ノ:「自分が描きたいこと・主張したいことは恥ずかしがらずにドストレートに漫画に入れ込もう」ということは毎回意識しています。正直描いていて恥ずかしくなる時もありますが、ありがたいことに「描きたいことが伝わってくる」と言ってもらえることが多いです。そういった開き直っていることが功を奏しているのかなと思っています。
――ちなみに、東ノさんも作中の2人のように「描くことが好きでたまらなかったのに、ある時期を境に描くことが辛くなった」という経験はありましたか?
東ノ:それが1度もないんです。絵や漫画を描く行為も、漫画家を志す道のりもそれなりにしんどいのですが、しんどいと思いつつ描いているとなんだかんだ楽しくなるので、本当に辛いと思った経験はありません。ただ、背景とネームの制作はいつも辛いです。
――最後に今後の目標など教えてください。
東ノ:連載漫画家を目標としてはいますが、最近いろいろ考えて“楽しく漫画を描くこと”を大事にしたいと考えるようになりました。とはいえ、やはり“職業・漫画家”には憧れがあるので、そこに向けてもっと精進したいです。基本的に漫画はXやpixivなどに投稿するつもりですので、興味があれば読んでもらえるとありがたいです。私の作品を読んでいる時、少しでも素敵な時間になれば嬉しいです。
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