『ドラゴンボール』 実写版がなければ新作アニメは生まれなかった? “伝説”の内容を振り返る

 新作となるアニメ『ドラゴンボールDAIMA』の制作が発表され、SNSで大盛り上がりだ。言わずと知れた、1980~90年代の子どもたちを熱狂させた『ドラゴンボール』の新作アニメであり、公開された資料を見るとキャラクターもよく動いているし、バトルシーンも迫力満点である。しかもキャラクターデザインなど様々な面で原作者の鳥山明が参画しているとなれば、期待せずにはいられない。

  SNSでは新旧のファンの枠を超えてお祭り騒ぎになっているが、ファンの間では“伝説”となっている『ドラゴンボール』の実写版『DRAGONBALL EVOLUTION』がAmazon Primeで配信されることが決まり、話題になっている。『DRAGONBALL EVOLUTION』はハリウッドで制作された映画だが、実は、この作品こそが様々な意味で『ドラゴンボール』の歴史を語る上で重要な作品なのである。『DRAGONBALL EVOLUTION』がなければ『ドラゴンボールDAIMA』が制作されることもなかったのでは、とファンの間ではささやかれている。

  いったいなにが伝説なのか。書いてしまうとネタバレになるので、支障のない範囲内で内容を書いておこう。この作品は、原作で言えば悟空の少年時代からピッコロ大魔王編までの物語をベースにしている。ところが、孫悟空がかなり地味な高校生で、しかもいじめられっ子である。悟空は同級生のチチに恋心を抱いているが、内向的な性格のためになかなか思いを伝えることができない。ブルマは、ドラゴンボールがもつエネルギーをなんと発電に使おうと考えており、拳銃を武器に戦う。よく知られている『ドラゴンボール』のキャラ設定と違うぞ、と思った人も多いだろう。つまりは、そういうことだ。

  漫画雑誌の週刊連載は漫画家にとって大きな負担となる。鳥山も、連載終了直後は一種の燃え尽き症候群のような状態になっていて、しばらく『ドラゴンボール』をもう描きたくないと言っていた。このまま、鳥山が作品に関わることはないのではないか、そう噂されたこともあった。ところが、『DRAGONBALL EVOLUTION』が、彼の創作意欲に火をつけたのである。実写版の完成度についてはここで述べないことにしておくが、どのような形であれ、鳥山の創作意欲が爆発したという意味では、この実写版の意義は大きいだろう。

  こうして誕生したのが、劇場版アニメ『ドラゴンボールZ 神と神』である。この作品は大ヒットとなり、往年のファンを喜ばせ、さらに新しいファンも多数獲得するに至った。その後、鳥山が様々な形で『ドラゴンボール』に参画する機会は増えていく。これは、『ドラゴンボール』の連載終了から時間が経ち、鳥山自身が客観的に作品を見ることができるようになったこと、そして、放っておけばいろんな意味で大変なことになってしまうと気づいたからに他ならないのではないだろうか。

  かくして、『ドラゴンボールZ 復活の「F」』や『ドラゴンボール超 ブロリー』など、数々の傑作映画が、鳥山の監修のもとで生まれることになったのだ。そして、今回の『ドラゴンボールDAIMA』に至る。鳥山本人が「いつもよりかなり気合いが入っているかもしれません!」とコメントしていることから、相当力の入ったアニメになっていることは間違いないだろう。『ドラゴンボール』シリーズの総決算的な作品になるかどうか、公開が今から待ち遠しい。

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