ヒット作の続編ラッシュ、少女漫画界の未来はどうなる? 『しゅごキャラ!』連載再開から考察

ヒット作の続編続く少女漫画界

  アニメ化もされたヒット作『しゅごキャラ!』の新シリーズが、2024年夏ごろから連載開始すると、10月3日に公式Xが発表した。また、同作が連載される講談社の少女漫画雑誌「なかよし」編集部も公式Xを更新、連載開始を告知した。

 

 『しゅごキャラ!』はPEACH-PITによる漫画で、「なかよし」で2006年2月号~2010年2月号にかけて連載され、その後も『しゅごキャラ!アンコール!』が2010年4月号~9月号にかけて連載されたヒット作品である。この発表を受けて、『しゅごキャラ!』の公式Xはバズりにバズって、2023年10月4日現在で、「いいね」がなんと12万6000件もついている。Xの利用者層にかつての読者が多く含まれていることがよくわかる。

  しかし、その一方で「なかよし」本誌の印刷部数は4万3000部となっており、5万部を割り込んでいる。これは日本雑誌協会が発表した、2023年4月〜6月の3ヶ月ごとの平均印刷部数である。1990年代、『美少女戦士セーラームーン』の全盛期は約200万部を発行していた「なかよし」だが、非常にさみしい数字だ。「りぼん」も12万5000部、「ちゃお」も14万3333部だから、全体的に少女漫画は雑誌の売上が低調傾向にある。

 「なかよし」の連載陣を見てみると興味深いことがわかる。最新の2023年11月号、表紙は『カードキャプターさくら クリアカード編』であり、本作はかつてのヒット作『カードキャプターさくら』の続編である。付録も、同作のメモリアル☆箔押しアクキーだ。さらに、現在連載中の『ぴちぴちピッチ aqua』も、『さくら』同様、かつてのヒット漫画の続編であるし、昨年まで『東京ミュウミュウ オーレ!』が連載されていたが、こちらもやはりかつてのヒット漫画の『東京ミュウミュウ』の設定を活かした作品であった。

  もともと「なかよし」はメインの作家にベテランを据える傾向が強いが、近年の傾向を見ると「なかよし」が過去のヒット作頼みの誌面構成をしている印象が拭えない。ターゲットは小学生~中学生よりも、明らかに30~40代などの高めの年齢層を狙っていると思われる。親にグッズを買ってもらう必要がある小学生よりも、30~40代向けの作品の方がメディアミックスもしやすいのだろう。

  近年、漫画はアニメ化やメディアミックスを前提に作られることも多いという。確かにそれは制作の方法論として正しい。しかし、その一方で、子ども向けの少女漫画が減少していることを危惧する声もある。アニメも放映本数は多いが、大半が大人向けの作品であり、子どもが純粋に楽しめる作品は非常に少ない。言うまでもなく、子ども向けの作品はメディアミックスが難しく、収益を上げにくいからだ。

  現に、最近の子どもたちにとって漫画はメインの娯楽ではなくなっている。今のままでは、子どもたちが漫画を読まなくなるのではないか、という声はちらほらと聞こえる。『しゅごキャラ!』は記者も好きな作品なので続編が出ることは嬉しいが、敢えて苦言を呈するなら、この作品が「なかよし」連載陣のメインになってしまっては将来が不安である。次世代の漫画家を育成し、また読者を育てるためにも、過去のヒット作依存の体制から抜け出すべきではないだろうか。

 

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