ギザ10が10万円? 和同開珎はいくらになる? 歴史好きもハマる奥深きコインの世界
コレクションの王様といえば、切手、そしてコインが挙げられる。身近にあって手軽に始められるコレクションだからである。特にコインは財布に入ってきたお釣りを集めるだけでも、十分にコレクションが形成できる。例えば、10円玉の年号をすべてコンプリートするだけでも一苦労であり、始めるとなかなか病みつきになってしまう。
コインのコレクターが必携のアイテムが『日本貨幣カタログ2022』(日本貨幣商協同組合/編集)である。これまで日本で製造・発行された歴代の主要なコインが網羅されているとあって、歴史好きにもたまらない一冊になっている。ページをめくれば、「あのコインにこんな値段がついているの?」と、驚くことも多いはずだ。
和同開珎は、もっとも安くて18~35万円が相場
例えば、日本史の教科書に必ず登場する和同開珎は、もっとも安いもので18~35万円くらいで買うことができる。和同開珎は種類がたくさんあり、状態によって値段が大きく異なるといい、中には300~550万円するものもある。それでも歴史ロマンを秘めた約1300年前のコインが数十万円で手に入るなら、考えようによっては安いのではないだろうか。
大判はどうだろうか。豊臣家が鋳造を命じたといわれる天正菱大判金は、7000万円~1億円である。本書によれば、大判は家臣へ恩賞や朝廷・公家などへの贈答用に造られたため、もともと流通量が少ないという。とりわけ、天正菱大判金は現存数が数枚といわれ、日本の数あるコインの中でもトップクラスに高価な1枚といえる。対して、小判は時代劇に多く登場するように、悪代官からがめつい商人まで広く使われたため流通量が多く、大判と比べればポピュラーなコインだった。江戸時代の最末期に鋳造された万延小判金であれば、もっともグレードの低い状態のもので12万円、状態が良いものでも20万円で手にすることができる。
銭形平次が投げたことで有名な寛永通宝は、江戸時代の一般庶民が使ったコインの代表格である。状態にこだわらなければ100円から手にできる。神社の境内などで開催されている青空骨董市では、1枚10円、50円、一山いくらで売られていることもあるくらいだ。しかし、寛永通宝にもまた様々な種類があるため、珍しいものは数十万円するようだ。
ギザ10は完全未使用品で10万円がつくことも
コインのなかでも、もっとも有名な存在といえば“ギザ10”だ。誰しもが一度は集めたことがあるのではないだろうか。そんなギザ10だが、普通の状態であれば額面通りの10円にしかならない。しかし、未使用品、つまり表面に美しい光沢が残っているものであれば事情が異なる。昭和26年銘があるギザ10は、状態が完未(完全未使用品)であれば10万円の値段がついている。10円玉は表面が酸化しやすいため美しい状態のまま残っていることが極めて珍しいためだ。
本書によれば、完未とは「表面の輝きが製造時の状態を保ち、製造時の摩耗・スリキズ・当たりキズなど全くないもの。ただし、ごく僅かな製造時のスレ・当たりキズは認められる」とある。なかなかハードルは高いようで、財布の中から見つけるのは困難だが、あのギザ10がとんでもない価値になっていることに驚きだ。
5円玉の文字が筆で書かれたようなフォントになっている、通称“フデ5”においてもいえる。昭和20年代のフデ5も、完未や、状態の良いものであれば数千円の値がつく。昭和27年銘のフデ5は、完未であればなんと4万円である。5円玉の中でも発行枚数が少ないことで有名な昭和32年銘のフデ5は、完未で1万5千円だ。もとは5円と考えたら、途方もない高額である。
レアコインの表面を研磨剤で磨くのはNG
なお、そうした値段がつくのであれば、ボロボロなコインの表面を研磨剤で磨いてしまえばいいのではないか、と考える人もいると思う。それはご法度だ。コインのコレクターであればすぐに見抜いてしまうし、何より表面を削ってしまうため、コインを劣化されてしまうのだ。コインは手にした時の状態のまま保存するのがポイントである。
コインは多くの人々の手を渡ってきた、時代の生き証人である。貴重な歴史遺産を手元に置いておけるのだから、夢のあるコレクションだ。子どもの頃にコインを集めていたという人も、ぜひこの本を手に、再度コレクションを始めてみてはいかがだろう。