『こち亀』両津勘吉 令和の時代にこそ響く昭和時代に放った名言集
『週刊少年ジャンプ』で40年にわたり連載された漫画・『こちら葛飾区亀有公園前派出所』。その主人公といえば、バイタリティあふれる警官・両津勘吉だ。
両津は作品のなかでさまざまな名言を残し、それを胸に刻んで生きた人もいると聞く。そこで今回は『こち亀』初期のなかから、心に残る両津の発言を紹介したい。
「人混みの中でしか文句を言えんのは日本人の悪いクセだ」
記念すべき『こち亀』の第1巻で発せられた両津の名言が「人混みの中でしか文句を言えんのは日本人の悪いクセだ」という名言である。
これは両津が仕事中に聴衆から「ポリ公」と声をかけられたことに激怒し、「いったやつはどいつだ!」と問い詰めるも、全員が否定したことに憤慨して発した言葉だった。両津が指摘した「日本人の悪い癖」は、現代のSNS上での批判や論争にも通底していると感じる人もいるのではないだろうか。この言葉は1976年に放ったもの。両津は、日本人の「本質」を見抜いているのかもしれない。
「なんでもかんでも社会のせいにしちまえばすむ!」
派出所で中川との格差に憤る両津。「あいつは去年卒配してまだ1年足らずで外車が多数。わしは勤続15年で自転車1台。この差はどこからきたんだ」と悩む。
その後両津は「わし自身には問題がないはず。とすると首相の責任になるわけだ。日の丸会社の親玉だからな」と考え、最終的に「こういうめんどうくさいことはすべて社会が悪いってことなんだな。なんでもかんでも社会のせいにしちまえばすむ。このひとことで一件落着だ」と笑った。
「社会のせいにしちまえばすむ」という手法は、現代も実践されているふしがある。こちらも、日本人の本質をついていると言葉といえそうだ。
「人の趣味にまで文句を言われる筋合いはねえ!」
部長から趣味について「同じ趣味ならもっと高等な物にしろ。盆栽とか囲碁のほうがよっぽどいい」と咎められた両津。
怒りそのままに「30過ぎてようと大きなお世話だ。人の趣味にまで文句を言われる筋あいはねえ」と反論。さらに「そんなもの、死にかけたじじいがやるもんだ」と吐き捨てた。
現代では多様性が認められる社会になっていると言われるが、それでも部長のように他人の趣味を蔑むような声を投げかける人物も身近にいるのではないか。そんなときに、使いたいフレーズであるといえよう。
「愚痴など言う前に、世の中自分で変える気持ちが大事だ!」
飲み会の席で「私も昔は真面目に働いた時があったよ。しかし生活が全然よくなりゃしないんだよ」とこぼす声に、両津は「ばか言っちゃいかん。背を向けて生きちゃダメだ。男は前向きに進むもんだ」と一喝する。
さらに「わしなど公務員をやっておるが、いつだって裸一貫だぞ。愚痴など言う前に、世の中自分で帰る気持ちが大事だ!」と声をかけていたのだった。両津のこの発言は47巻に登場したものだが、現代でも十分に当てはまる。現状を嘆くよりも、世の中を帰るつもりで行動することは、かなり大ごとなのではないだろうか。
両津が昭和の時代に発言した名言の一部。そのどれもが現代でも参考になるもので、まさに「先人の知恵」といえる。破天荒な一面ばかりが目立つ両津だが、世の中を冷静に見て、人に勇気を与える言葉をかける能力に関して、非常に高いものがあるといえるのではないだろうか。