「青春ブタ野郎」シリーズ、なぜ多くの人々に刺さる? 思春期の迷いや悩み描く人気作の魅力

「青ブタシリーズ」の魅力

 新作映画『青春ブタ野郎はおでかけシスターの夢を見ない』の方は、そこまでのSF設定は持ち込まれていないが、代わりに進路に悩む中高生の気持ちに刺さるストーリーとなっている。

 引きこもりからどうにか脱して中学校に保健室登校までできるようになった咲太の妹が、進学先に咲太や麻衣が通っていた峰ヶ原高校に進学したいと言い出したが、内申書や学力の面でおぼつかないところがあった。進学カウンセラーは通信制の高校を薦めるが、それでも峰ヶ原にこだわる妹のために咲太や麻衣が勉強を教えるようになる。

 アットホームに見えるシチュエーションだが、咲太の妹が抱えていた心の不安はやはり小さくはなかった。過去に陥っていた境遇から峰ヶ原高校にこだわっているところがあって、そこに自分自身があるのかどうかが不明だった。親や周囲への体面から進学先や就職先を選んでも、長く続かないことはよくある。自分が本当にやりたいことは何なのか。そのために選ぶべき道はどちらなのか。青春に限らず誰もが人生のところどころで陥る迷いに、答えをくれそうなストーリーだ。

 以後も「青ブタ」シリーズは続いていくが、ここでバニーガールにも負けない不思議コスチュームの美女がストーリーに絡んできて、謎めいた雰囲気を醸し出す。霧島透子。ネットで音楽配信を行い中高生のカリスマとなっているミュージシャン。現実には誰もその姿を見たことがなかった彼女が、咲太の前にミニスカートのサンタクロース衣装を着て現れた。かつての麻衣と同じように、他の誰にも認識されない状況で。

 自分が「思春期症候群」をプレゼントして回っているという透子の話は本当なのか。どうして咲太に興味を示すのか。7月7日発売の第13弾『青春ブタ野郎はサンタクロースの夢を見ない』では、表紙に描かれたミニスカサンタ姿で咲太に接触してくる透子の狙いや正体が描かれて、「思春期症候群」というシリーズに共通のテーマにも新しい展開がもたらされそう。既刊を読み返し、TVアニメや劇場アニメを観てシリーズのことを振り返りつつ、大きく物語が動きそうな新刊を待とう。

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