アニメ『【推しの子】』ヒットの要因は“推しが増える”物語の構成にあり? 主要キャラクターたちの見せ場を考察

※本稿は『【推しの子】』のネタバレや考察を含みます。原作未読の方はご注意ください。

 アニメが好評放送中の『【推しの子】』。転生ファンタジーであり、サスペンスであり、ミステリーであり、ラブコメであり、タレントたちのサクセスストーリーでもあり……と、その多面的な魅力について日々、多くのファンが語り合っているが、刺激的なストーリーとともに、注目したいのはキャラクターの魅力だ。物語が進むごとに“推し”に迷う、あるいは“推し”が増える構成になっており、気づけば作品の世界にどっぷり浸かっていた、というファンは少なくないだろう。

 まず、アニメ第1話にまとめられた「幼年期」編(原作第10話まで)において、圧倒的な輝きを放っていたのは、天才的なアイドル・星野アイだ。「嘘」と「愛」という本作の重要なテーマを体現しながら、物語の本筋から退場しても存在感を保ち続けるアイは、いまもトップレベルに推されているキャラクターだ。

 そして、アクアとルビーの学園生活とともに、芸能界への道が示される「芸能界」(原作第11話〜20話)編へ。アイドルを目指し始めるルビーと、ドラマ出演で異才を放つアクアという、本来なら純粋に将来を嘱望されていい双子の輝かしい才能が強調されており、二人の主人公がきちんと推される内容になっている。元天才子役の“重曹ちゃん”こと有馬かなの存在感も、だんだんと目立ってくる。

 そこからアニメでも話題を呼んだ「恋愛リアリティショー」編(原作第21話〜32話)がスタート。こちらで作中の瞬間最大風速ともいえるインパクトを残したのが、天才舞台女優・黒川あかねだ。過剰演出や誹謗中傷という、リアリティーショーに横たわる問題を乗り越え、“アクアの好みの女性=星野アイ”を徹底的にプロファイルし、完全に再現して見せた姿は、声優・石見舞菜香の名演も相まってアニメ版でもハイライトに。「あかね推し」のファンを多く獲得した。

 そして、6月14日放送のアニメ第9話よりスタートしたのが、「アイドルもの」という事前情報を持たない多くの視聴者が期待した展開ともいえる「ファーストステージ」編(原作第33話〜第40話)。完璧なアイドル星野アイの娘として生を受けたルビー、苦労人でバズのスペシャリストであるYouTuber・MEMちょの魅力も引き出されるエピソードだが、何といっても、ブレイクするのは仕事に、恋愛に苦悩しながら「新生B小町」を引っ張っていく有馬かなだ。おそらくアニメ最終話で描かれるだろうあるシーンは、黒川あかねの“アイ降ろし”と並ぶ、作品全体のハイライトのひとつだ。

 このように、作品の象徴的な存在であるアイ、主人公といえるアクア&ルビー、その異才で事件の謎に迫る黒川あかねに、健気なヒロイン・有馬かなと、物語の進行に応じて入れ替わるように濃厚な見せ場があり、ファンを目移りさせながら飽きさせないのが、『【推しの子】』の大きな魅力のひとつといえるだろう。6月21日放送の第10話で視聴者の“推し”が誰になるのか、SNSの反応をチェックするのも楽しいかもしれない。

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