『呪術廻戦』五条悟を孤独から救ったのは……呪霊と人間を分かつ“触れる”ことの意味

五条悟を孤独から救ったのは

五条悟と宿儺の決定的な違い

 さらに言えば、現代最強の呪術師・五条悟をめぐる描写に関しても、触れることの両義性が織り込まれている。

 五条の術式である「無下限呪術」は、無限を現実化することによって、あらゆるものが自身に触れることを防ぐ力だ。その力を洗練させることで世界に敵なし、宿儺と同じく“天上天下唯我独尊”の境地に至ったのだが、それは同時に絶対的な孤独に陥るということでもあるだろう。

 しかし五条が宿儺と違うのは、他者との触れ合いを拒絶していないことだ。たとえば原作の第11話で虎杖が蘇った際には、五条が術式を解いて「おかえり」と「ただいま」のハイタッチを交わすシーンがあった。

 さらに最近描かれた第222話では、ふたたび虎杖が決戦に臨む五条の術式を解除させると、その手のひらで背中を叩いていた。この場では虎杖だけでなく、呪術高専の生徒たちが次々と五条に触れていく姿が描かれており、もはや彼は孤独から解放されているようにも見える。

 同シーンは作中における虎杖の役割がはっきり示された瞬間であると同時に、教師として仲間たちを育ててきた五条の到達点とも言えるのではないだろうか。

 最終決戦で勝利するのは、何者の接触も許さない宿儺か、触れ合うことを恐れない五条か。『呪術廻戦』という物語の行く末を見守りたい。

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