『呪術廻戦』五条悟を孤独から救ったのは……呪霊と人間を分かつ“触れる”ことの意味
※本稿は『呪術廻戦』のネタバレに触れています。
「週刊少年ジャンプ」の人気漫画『呪術廻戦』といえば、“呪い”を軸とした独創的な世界観が魅力。そこには呪霊と人間という2種類の存在が生きており、それぞれ全く異なる価値観を戦わせている。
とくに呪霊と人間の違いとして重要だと思われるのが、他者に「触れる」という行為がもつ意味の違いだ。
まず、作中の描写を見てみると、呪霊が他者に触れるシーンは相手を害する意味を持つことが多い。特級呪霊・真人の存在は、それを象徴するものではないだろうか。
そもそも真人の術式「無為転変」は、手のひらで相手に触れることによって発動する力。人間の魂の形を変えることによって、肉体を変形・改造できるというものだ。与幸吉を治したように、人間に友好的な使い道もあるのだが、ほとんどの場合は邪悪極まりない行為のために使われる。
人間が握手によって友好を図るのとは対照的に、真人にとって相手に触れることは敵対的な行為だと言えるだろう。宿儺が真人に魂を触れられ、不快感を露わにしていたことからも、その意味付けがよく伝わってくる。
その一方、術式をもたずに素手で戦う主人公・虎杖悠仁にとっても、相手に触れることは重要な意味をもつ。しかしその意味合いは真逆であり、真人が触れた相手を一方的に支配するのに対して、虎杖の拳は相互理解のきっかけになることが多い。
京都姉妹校交流会編の東堂葵戦では、拳と拳を交えることでお互いを理解し合い、花御戦では相手に戦いの喜びを目覚めさせた。また、起首雷同編で拳に痛みを覚えながら壊相を倒すシーンも印象的だ。
こうした描写から考えるに、作者の芥見下々は、人間が相手に触れるという行為に大きな意味を見出しているのかもしれない。