『ONE PIECE』ドンキホーテの一族、なぜ天竜人を裏切る異端者が続々と現れる?
漫画『ONE PIECE』で、絶大な権力を盾に横暴を極める“世界貴族”こと天竜人。天竜人が理不尽極まりないことをしても、バックには海軍がいるため誰も逆らえない。本作内のキャラたちにはもちろん、読者からも忌み嫌われている存在だ。なぜ天竜人がこんなにも傲慢なのかというと、800年前に世界政府を作った20人の王の末裔とされているからだ(ネフェルタリ家は除く)。
天竜人には敬称があり、男性なら「聖」、女性なら「宮」が名前のあとにつく。話す語尾も特徴的で、男性は「~え」、女性は「~アマス」といった口調になる。
天竜人の代表的な一族といえばロズワード一家だろう。ロズワード聖の息子・チャルロス聖は見た目も性格も醜悪そのもの。娘のシャルリア宮も冷酷非道な人物だ。天竜人を説明するのに最も適した一族だといえるだろう。
天竜人の中でも異質のドンキホーテ一族
しかし天竜人の中でも、ドンキホーテ一族だけはなぜか次々と異端者を輩出している。例えばホーミング聖(ドフラミンゴとロシナンテ<コラソン>の父)は、「人間ですよ。昔から」と言い放ち、家族で聖地マリージョアから出る決断をする。
またミョスガルド聖も自分の命を救ってくれたオトヒメに諭されて改心。恩返しのように、しらほし(オトヒメの娘)に危害を加えようとしたチャルロス聖を殴り飛ばした。
なぜドンキホーテ一族だけが「気づく」ことができるのか? 教育あるいは宗教も然りだが、教え込まれた思想が「間違っている」と認めることはなかなか難しい。天竜人は生まれたときから「下々民には何をしてもいい」と教えられて育つのだから、チャルロス聖のような振る舞いになるのも仕方のないことだといえるだろう。ネット上では「もともと良識のある血筋なのかもしれない」という意見や、「人の意見を聞ける素直な心を持ち合わせている一族だから?」などの声が聞かれた。
もちろん「気づいてしまった」ことで生まれる悲劇もある。ホーミング聖たちドフラミンゴ一家は、聖地マリージョアを出たあと地獄を見ることになった。天竜人によって虐げられてきた市民たちによってひどい暴行を受けたのである。ドフラミンゴはそんな日々に耐えられず、父を憎み、とうとう殺してしまう。父の首を持ってマリージョアに戻ろうと試みたが、天竜人にも受け入れてはもらえなかった。
一方、弟のロシナンテはドフラミンゴと対照的に父を恨んではいない。優しい心を持ち、トラファルガー・ローのように不幸な幼少期を過ごした子供を助けるため尽力していた。ロシナンテも結局ドフラミンゴに殺されてしまうこととなるが、「ドフラミンゴだけを責めるのは酷だ」という意見も多い。
古典『ドン・キホーテ』作者の気になる名言
作者の尾田栄一郎が、わざわざ「ドンキホーテ」と名乗らせているのも気になるところだ。古典『ドン・キホーテ』の作者であるミゲル・デ・セルバンテスは、「富を失うものは多くを失い、友人を失うものはさらに多くを失う。しかし、勇気を失うものはすべてを失うことになる」という名言を残している。この名言はそのままドンキホーテ一族に当てはまらないだろうか?
勇気を出して下界へ下りたホーミング聖に、チャルロス聖を殴り天竜人を敵に回したミョスガルド聖。ドンキホーテ一族の勇気が、これからの天竜人との関わりに深い意味を持つことになるかもしれない。