楳図かずお「手塚治虫文化賞」特別賞受賞 衰えを知らない創作への情熱は手塚作品の影響と脱却が関係?
朝日新聞社が主催する、第27回「手塚治虫文化賞」の各賞が決定した。
マンガ大賞(年間のベスト作品)
『ゆりあ先生の赤い糸』 (講談社) 入江喜和(いりえ・きわ)
新生賞(斬新な表現、画期的なテーマなど清新な才能の作者)
ガンプ『断腸亭にちじょう』(小学館)でガン闘病を巧みな筆致で詩情的に表現した独自性に対して
短編賞 (短編、4コマ、1コマなどで優れた成果をあげた作品・作者)
やまじえびね 『女の子がいる場所は』(KADOKAWA)に対して
特別賞(マンガ文化の発展に寄与した個人・団体)
楳図かずお (うめず・かずお) ホラー、SF、ギャグと幅広い分野でのマンガ文化への貢献と、27年ぶりに発表した新作に対して
手塚治虫文化賞は日本の漫画文化の発展、向上に大きな役割を果たした手塚治虫の業績を記念し、その志を継いでマンガ文化の健全な発展に寄与することを目的に、朝日新聞社が1997年に創設した漫画賞である。
年間を通じてもっとも優れた作品に贈られる「マンガ大賞」のほか、「新生賞」「短編賞」「特別賞」があり、正賞の鉄腕アトム像と副賞(大賞200万円、その他100万円)が贈られる。
贈呈式は6月8日(木)、東京・築地の浜離宮朝日ホールで開催。一般参加者200人を招待し、特別賞の楳図かずおと、矢部太郎選考委員が語り合う記念トークイベントも実施される
今回注目されたのが、特別賞を受賞した楳図かずおであろう。楳図といえば、『まことちゃん』『漂流教室』などの傑作で知られる。『森の兄妹』でデビューを飾って以来、ギャグ、SF、ホラーまで旺盛な執筆活動を続けていたが、1995年以降は休筆していた。しかし、2018年、第45回アングレーム国際漫画祭で代表作の一つ『わたしは真悟』が遺産賞を受賞、2020年には同作でミケルッツィ賞・最優秀クラシック作品賞を受賞するなど、海外でも高く評価されるようになった。
こうした評価の高まりが楳図を創作に向かわせる動機になったようだ。かくして、約4年を費やしたという27年ぶりの新作『ZOKU-SHINGO 小さなロボット シンゴ美術館』が発表された。手塚治虫文化賞で社外選考委員を務めた芸人・漫画家の矢部太郎は楳図かずおの新作を「事件」と評したほどで、原画101点による連作絵画として制作されている。現在86歳になる楳図だが、4月25日に朝日新聞社が報じたインタビューでは飽くなき好奇心の高さと創作への情熱を語っていた。
楳図は1947年、小学生の頃に手塚治虫の『新宝島』を読んで漫画家を志した。その後、手塚治虫の影響を脱するために試行錯誤を重ね、独自の画風を構築したとされる。果たして記念トークイベントでどんな話題が飛び出すのか、楽しみである。
【贈呈式・記念トークイベント】
◆日時=2023年6月8日(木)14時~16時
◆場所=浜離宮朝日ホール(東京都中央区築地5-3-2)
◆申し込み=応募ページ: http://t.asahi.com/27event
◆締め切り=5月12日(金)。応募多数の場合は抽選。当選者にはメールをお送りします。