NBAで衝撃の活躍見せる八村塁、『SLAM DUNK』は未読だった? 連載終了後に生まれたスターに感じる“湘北の遺伝子”

八村塁選手に感じる“湘北の遺伝子”

 日本のバスケットボールファンにとって、なんと楽しいシーズンだろうか。昨年来、アニメーション映画『THE FIRST SLAM DUNK』が大ヒットを続けており、バスケ好きのバイブルともいえる原作漫画『SLAM DUNK』熱が急上昇。かと思えば、NBAの名門・レイカーズのメンバーとしてプレーオフに進出した八村塁選手が、初戦でチーム最多の29得点を挙げるという衝撃のニュースが飛び込んできた。

 『SLAM DUNK』の連載当時(1990~1996年)、「日本人選手がレイカーズで大活躍する」といわれて信じる人は決して多くなかったはずだ。日本のバスケットボールシーンを巡る状況は現在とはまったく違い、例えば日本のプロバスケットボールリーグ・B.LEAGUEが誕生したのは、連載終了から20年後の2016年。アメリカから日々、驚きのニュースを届けてくれている八村選手が生まれたのも、連載終了から2年経った1998年だ。

 もちろん、『SLAM DUNK』は連載終了後も多くの人々を魅了してきた。有名バスケットボール選手も当然例外ではなく、たとえば日本を代表するプレイヤーである富樫勇樹選手は、2021年6月2日にスポーツメディア「Sportiva」掲載されたインタビュー(千葉ジェッツ富樫勇樹が『SLAM DUNK』の名シーンに鳥肌。「安西先生の言葉が現実で起きたよう」)にて、『SLAM DUNK』を語っている。渡邊雄太選手がトロント・ラプターズの本契約を勝ち取った(当時)というニュースを受けて、「”お前を超える逸材がここにいるのだ……!!””それも……2人も同時にだ......"ってシーンが浮かびましたね」と、安西先生が今は亡き教子を思い、桜木花道・流川楓のルーキーコンビを評した言葉を紹介。もちろん、もうひとりは八村選手だ。

 その八村選手だが、実は2018年の時点で「『SLAM DUNK』を読んだことがない」ということが明らかになっている。「朝日新聞デジタル」公式YouTubeチャンネルにて2018年12月6日に公開された動画「【バスケ】井上雄彦さん、八村塁選手と対談 日米の差は「思いの強さ」(記事は同年6月24日に掲載)にて、『SLAM DUNK』作者の井上雄彦氏と対談しており、「押し売りのよう」(井上氏)な形でコミックスをプレゼントされていた。

 対談の中で、井上氏が「漫画みたい」とつぶやいたエピソードがある。当時、アメリカの大学でプレイしていた八村選手は、チームメイトが激しい言い合いの喧嘩をする様子に当初は衝撃を受けたというが、ぶつかり合って仲良くなっていくことを楽しめるようになったと語った。考えてみれば、『SLAM DUNK』の湘北高校こそ、選手たちが遠慮なく言い合い、お互いを高めながら結束していったチームではないか。桜木と流川が「敗戦の責任」を自ら取り合うように始まった大喧嘩に、あるいは赤木が三井に見舞った平手打ちに、プレゼントのコミックスを読んだ八村選手は何を感じただろうか。

 『SLAM DUNK』は今までもこれからも、現実のバスケットボールシーンに影響を与え続ける名作だ。連載終了後に生まれた八村選手が、アメリカを目指す沢北や流川の遠く先をゆくキャリアを歩んでいくなかでも、その輝きが失われることはないだろう。

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