『SLAM DUNK』湘北高校の体育祭、流川の好きな歌手、木暮の学校生活……あまり描かれない「日常」を考察

『SLAM DUNK』知りたい「日常」

 映画『THE FIRST SLAM DUNK』の大ヒットが続いている。往年のファンにとってうれしく、また新鮮だったのは、宮城リョータを中心に原作ではあまり描かれなかった「日常」を垣間見られたことだ。

 「週刊少年ジャンプ」での連載が終了した1996年以降、『SLAM DUNK』には続編も正式なスピンオフもなく、作品世界の情報が更新された出来事といえば、2004年12月、作者の井上雄彦自身が廃校となった旧神奈川県立三崎高校の黒板に、湘北高校メンバーの「あれから10日後」の姿を描いたことくらいだった。そのなかで『THE FIRST SLAM DUNK』は、既存のエピソードに加えられた新たな情報量が多く、各キャラクターの背景や日常に想像を広げられる作品に。観賞後に原作を読み直すと、新たな感動が得られた。

 『SLAM DUNK』は本筋から外れた“日常パート”が少なく、バスケットボールにかける彼らの青春が凝縮されたような作話がひとつの魅力だ。完成された作品であり、余計な情報はいらない、というファンもいるかもしれないが、大好きなキャラクターたちをより深く知りたいというのもまた、ファンの思いだろう。続編となる“第二部”が描かれる可能性が高いとは思えないなかで、もし今回の映画のように、何らかの形で本筋外のサイドストーリーが描かれるとしたら、ファンはどんな内容に期待するだろうか。

 一つには、意外に描かれていない学校での日常が挙げられるだろう。「クラスでの立ち位置」は断片的な描写からなんとなく想像がつくが、抜群の運動能力を持つ彼らが「体育」の授業や体育祭でどんな活躍をするのか……というのは、原作にあってもよさそうなエピソードだ。桜木花道が柔道をする姿も見てみたい(花道を勧誘し損ねた柔道部主将・青田龍彦が恨めしげに覗いている様子が想像できる)し、バレーボールでも凄まじい才能を発揮しそう。リョータは野球やサッカーもうまそうだ。

 人気作のサブキャラクターを主人公に据えたスピンオフ作品が増加している現在の目線で考えると、地味キャラだが高い人気を誇る、木暮公延の学校生活も気になる。スター選手の中に埋もれがちだが、インターハイ出場校の副キャプテンで、おそらくそれなりに勉強もでき、優しく芯のある努力家でメガネを外すとイケメン……という“優良物件”であり、本人の気づかないところでモテていそうだ。

 「家族」のエピソードも、しっかり描かれたキャラクターは『THE FIRST SLAM DUNK』の宮城リョータのほか、原作では父にバスケを仕込まれた山王工業のエース・沢北栄治くらいのもの。花道は不良時代、父親が倒れたエピソードが描かれているが、家族構成もわからない。簡単な描写がある赤木家はなんとなく想像できるとして、流川や三井寿、仙道彰や牧紳一、清田信長などがどんな家庭環境で育ち、どんな部屋で生活しているのか、気になるところだ。

 また、「趣味」の描写も極めて少ないため、主要キャラクターがバスケ以外のどんなことに楽しみを見出しているのか、というのも知りたい情報だ。例えば、流川は音楽を聴きながら自転車を走らせているシーンが印象に残る。そのシーンに書き込まれた歌詞から、Princeの楽曲で『SLAM DUNK』2巻のタイトルにもなっている「New Power Generation」を聴いているようで、洋楽好きなのか、誰かの影響なのか……と、それだけで想像が広がる。趣味は「寝ること」と公言する無愛想な流川にも好きなアーティストがいると考えるだけで、少し色気が感じられるだろう。

 「食事」も気になる要素だ。花道はかなりの大食漢で、学食にてカツ丼大盛り・コロッケ・秋刀魚・焼きそば・ホイコーローに、味噌汁がわりのラーメンを注文していたシーンが記憶に残る。昨今増えている“グルメ系スピンオフ”なら、付き合いで無茶な食事をさせられている桜木軍団視点の物語を読んでみたい。安田、角田、潮崎、桑田、佐々岡、石井など、湘北高校サブメンバーの中にひとりはグルメキャラがいてもいいだろう。料理にハマっている角田が魚屋で魚住純とバッタリ……のような展開も想像できる。

 このように、縦横無尽にキャラクターへの想像力を広げてくれたのが、『THE FIRST SLAM DUNK』だった。皆さんはどんなキャラクターのどんな日常を覗き見てみたいだろうか。

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