『チェンソーマン』は“背景描写”も面白い シャレや謎の数列など、頻出するモチーフを紹介
老若男女問わず、多くの読者を虜にしている漫画『チェンソーマン』。作者の意図を超えた「考察」を広げることに賛否の声もあるが、刺激にあふれながら、いかようにも深読みできる懐の深さが魅力のひとつだろう。そして、本作はストーリーだけでなく“背景”にも多くの仕掛けが施されている。
作者を想起してしまう背景描写
深く考え込むまでもなく、シンプルな楽しみとして見出せるのは、『チェンソーマン』の作者「藤本タツキ」に絡んだ背景描写だ。
たとえば1巻の第3話「東京到着」のデンジと早川アキが歩くシーンにて、「タツキバンク」と描かれた看板が描かれた。また同じコマでは途中で見切れているものの「~本ビル」、「フジモ~」と描かれた看板も登場している。
また9巻の第76話「開けちゃダメ」では銃の悪魔が都市を壊滅させるなか、崩れゆく電柱に張り付けられた看板には「フジモトモグモグ」という文字を確認することができる。5巻の中表紙として描かれた1枚絵にて宙を舞う天使の悪魔(エンジェル)と共に、その背景には「藤本樹飯」という看板が描かれた。
藤本タツキ氏の存在を彷彿とさせる背景は建物や看板だけでない。7巻の第56話「呪いと初めて」にてデンジやパワーたちが食事をするハンバーガー店では「TATSUKI TATSUTA」というメニューを確認することができる。同じく7巻の第58話「黒瀬ユウタロウ」では「TaTuKi」と描かれたビール缶も登場している。
ときにグロテスクなシーンが描かれたり、登場人物が次々と命を落としたりなど、シリアスな展開の多い本作の背景に散りばめられる藤本タツキ氏の遊び心。それはまるで日本でも広く親しまれている絵本『ウォーリーをさがせ!』にも似た魅力を感じる。
考察したくなる背景描写
藤本タツキ氏を彷彿とさせる言葉が多く登場する『チェンソーマン』の背景であるが、他にも複数回にわたり登場している言葉が存在する。そのひとつが「今治製薬」だ。
3巻の第23話「銃声」にて奇襲を仕掛けたサムライソードに対し、アキの出現させた狐の悪魔は建物ごとサムライソードを食らう。大きく描かれた狐の悪魔の背景として看板に描かれたのが「今治製薬」という言葉だ。また12巻の第98話「鳥と戦争」でも学校の屋上で食事をするアサの姿の背後に「(株)今治製薬」と描かれた看板が確認できる。
作中でたびたび登場している言葉は「今治製薬」だけではない。12巻の第102話「セーブ ザ キャット」にてチェンソーマンとゴキブリの悪魔が戦闘するシーンでは「藤本ビル」と共に「108087」と描かれた看板が登場している。しかもこの数字は12巻、そして13巻の中表紙となる1枚絵の背景としても描かれた。
「今治製薬」、そして「108087」といった複数のシーンで確認できる言葉にはどのような意味が隠されているのか。上記の言葉をはじめとする背景の描写について、SNS上などではさまざまな考察が繰り広げられている。その内容にはここでは触れないが、このように何の説明もなく頻出するモチーフを探して読むのも楽しく、今後、詳細が明かされることがあるのか、気になるところだ。