北方謙三 × 長濱治 × EXILE AKIRA、それぞれの表現を語り合う 書店イベント『老犬2匹は、十字路で奴と出会う』レポ

北方謙三 × 長濱治 × AKIRA鼎談

 さらにAKIRAは「初めてダンスに衝撃を受けたのは、コメディアンがふざけて踊っている番組。見よう見まねで友達を笑わせていました」と意外なルーツを明かす。3MCに1パフォーマーというグループ(RATHER UNIQUE)を組んでいた時は、自分ひとりが踊るという特性から、いつも即興で踊っていたという。さらに当時を「5曲から10曲をフリーで踊ることほど苦しいことはない。これで『自由』ということの難しさ、社会人の感覚を知った」と回想。

 この「自由」というワードで北方が閃いた発想がまたハードボイルドで「もともとブルースは『自由への幻滅』なんですよ」と切り出す。長濱はギャングが武闘ではなくダンスで競う文化を指摘し、AKIRAはLAで出会った怒りの表現としてのダンスジャンル・KRUMPを紹介した。北方からはヒップホップ映画『ストレイト・アウタ・コンプトン』のタイトルも飛び出し、ひとしきり黒人文化で盛り上がる。

 またAKIRAは「楽なものと辛いものがあったら辛い方を選ぶ」という北方の言葉にインパクトを受けたのだという。それについて北方は「作家として生き延びられたのは、題材や書く枚数とか辛い方を選んだからだと思いますよ。そっちの方が鋭敏でいられる」と話す。対して長濱は「人にはよく言うよね」というジョークを挟みつつ「よくわかる。読み手より書き手の方が早い。一時の赤川次郎さんもそうだった。毎回、騙されつつ引き込まれる」と評した。逆に長濱自身も「写す動機をしっかり定めないと表現にならない」と再び表現を語り、「真を写す」写真の本質に迫った。

 最後に北方は「年齢を重ねる」ことに言及し、新著を贈ったサックス奏者・渡辺貞夫からの返礼の手紙を紹介。「僕は歳を取ってしまった。だから新しいことはできない。でも今持っていることで描くだけだ」という言葉に一同が感嘆の声を上げた。この日の主役のふたりを含め、こんな大人になりたいものである。

 最後に北方が「対話ができて心が動きました」、長濱が「表現者・AKIRAの姿かたちなどは、撮る側とすればイージーです。次はそうでない彼を撮ってみたい」、AKIRAが「タイトルの通り、お二方と十字路で遭遇できて嬉しいですし、学びながら精進していきたい」とそれぞれ語り、トークセッションは幕を閉じた。

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