倉田真由美 、介護芸人・さかまき。による原作を漫画化した理由「高齢者をここまでリアルに面白く描いているものはない」
絵柄がテーマとベストマッチ!?
――『お尻ふきます!!』には介護現場のセクハラなど、様々な問題が描かれています。しかし、倉田先生のゆる~い絵のおかげで重苦しくなく読めますね。
倉田:確かに、そうかもしれないね(笑)。『だめんずうぉ~か~』(以下、『だめんず』)でも、洒落にならんレベルの重い話をたくさん描いています。男に殴られて肋骨が折れた、という女性は何人も描いたけれど、それって普通に聞いたら凄惨な話だよね。私の絵で漫画にしたから、なんとか読めたというのはあると思います。
――仮に劇画調のリアルな絵だったら、絶対、笑って読めないと思いました。
倉田:『だめんず』がドラマ化したときも、暴力シーンの表現は悩ましかったですね。実際、再現ドラマでやるのは難しいと感じました。そして、介護の現場でも暴力の話は聞きますよね。これから登場するかどうかはわかりませんが、この絵のおかげで難しい問題を知ってもらう機会になるのかなと思います。
介護に対する意識が変わった
――倉田先生は、「くらたまのいま会いたい手帳」という、介護をテーマにした著名人との対談企画を担当しています。
倉田:対談でいろいろな人に会ってきましたが、お会いしてイメージが一番変わったのは加藤綾菜さんです。ご存じ、加藤茶さんの奥様ですね。結婚直後は、「お金目当てで結婚した」などと中傷されていましたが、彼女は心の底からカトちゃんを愛しているんですよ。介護の資格もとっていますし、高齢者に接する姿勢が他の人と違う。お話を伺って、高齢者と接するのが好きなんだなあ、と感じました。
――介護の現場は暗いイメージで語られがちです。対して、介護が好きという方もいらっしゃるわけですよね。
倉田:どのように高齢者に接するかで差が出ますし、私は介護に向いていない人がやるから、高齢者の虐待に繋がってしまうと考えています。適性の判断は難しいけれど、向いている人が入ってきやすい環境を整える必要はあるよね。特に現状では、介護職の大変さと給料が釣り合っていませんから。
――給与面が改善されたら変わってくるのでしょうか。
倉田:そうしたら間口も広がり、すすんで介護職をやる人がもっと多くなるはずですよ。介護職って、人として思いやりがある人が向いているかなというと、意外とそうではない。さかまき。さんは介護に向いている人だと思うけれど、いい奴、という表現は合わないもん(笑)。芸人らしい変わった感性の持ち主で、笑いのセンスも漫画の才能もあるけれど、決して優しいとは思わないものね(笑)。
――さかまき。さんは、どうして介護に向いているんですかね?
倉田:どうしてなのでしょうね。彼に話を聞いたら「やめたいとは思わない」と言うんですよ。それがまさに、向いているということだと思います。芸人として売れちゃったら辞めちゃうかもしれないけれど、まだ幸いにも……(笑)。
ノンフィクションの凄みを感じた
――(笑)。それにしても、作中にチョイ役で登場する高齢者も皆個性派揃いです。
倉田:高齢者をここまでリアルに面白く描いている漫画って、少ないんじゃないかな。私は『お尻ふきます!!』を描きながら、フィクションよりもノンフィクションの方が凄いかもしれないって、改めて思っています。第3話に出てくるジローさんみたいに、毛布を上着のように着込んで座布団を背負って歩きまわる人とか、そんな設定考えても思いつかないじゃないですか。
――倉田先生の創作意欲を刺激している点でも、さかまき。さんとは名コンビだと思います。
倉田:初めての原作付きの漫画で、凄い人と組めたと思っています。私は原作担当になることはあっても、まさか原作付きの作画担当になることはないと考えていたので、それだけで驚きです。とにかくいい作品に関われているのはありがたいですね。
――筆がのっている倉田先生です。これからの展開にも期待したいですね。
倉田:私もこれから漫画がどうなるのかわかりませんが、さかまき。さんは介護の現場でたくさんの人と接していますので、エピソードは尽きることがないでしょう。毎週の更新を、楽しみにしていただければ幸いです。