『ブルーロック』少女漫画ファンにも波及? 『東京卍リベンジャーズ』との共通点から考察
2月13日に発売された月刊少女漫画誌「別冊フレンド」3月号の品切れ状態が続き、重版になったことを同誌編集部が発表した。想定を超える売り上げの理由は、同じく講談社の「週刊少年マガジン」で連載されている人気サッカー漫画『ブルーロック』とのコラボグッズが付属していたことと見られる。なお、「別冊フレンド」は2021年12月発売号でも「週刊少年マガジン」の大ヒット作『東京卍リベンジャーズ』とのコラボグッズを付録として展開し、反響を受けて発売前重版を発表していた。読者層の女性にも人気の高い少年漫画とのコラボは、今後も加速していきそうだ。
さて、今回の主役になった『ブルーロック』はアニメの人気もあり、現実のサッカー界で日本人選手が活躍すると、海外のSNSや掲示板でもその名前が躍る注目作だ。日本中からユース年代の有望なストライカーを集め、世界一のストライカーを養成する「ブルーロック(青い監獄)プロジェクト」を描く刺激的な作品で、実はヤンキー文化×タイムリープというまったく別ジャンルの『東リベ』と、少なくない共通点が見られる。精査していくと、女性人気が高い理由の一端が紐解けそうだ。
人気のポイントという観点から、ストレートに共通点として挙げられるのが「推しキャラ選び」の楽しさだ。主人公と同等かそれ以上に目立つキャラクターが複数存在し、実際にスピンオフ作品も展開。ビジュアルは比較的スタイリッシュで、単行本の表紙が各キャラクターにフォーカスしたトレーディングカードやブロマイドのようにデザインされているのも、両作の共通点だ(※『東京卍リベンジャーズ』は元々ヤンキー漫画らしい装丁だったが、5巻から方針転換があり1~4巻も新デザインになった)。
ヤンキー文化やサッカーというモチーフに関心がなくても、推しキャラが見つかるバラエティ感。この辺りは、同じくキャラクターが立ちすぎていて、やはり女性人気が高い『テニスの王子様』や『黒子のバスケ』、古くは『聖闘士星矢』や『幽☆遊☆白書』などのジャンプ作品にも通じるところだが、『ブルーロック』や『東リベ』はより推しやすいオシャレさがあるように思える。それゆえにマニアックな感覚が強調されず、他誌に顔を出していても違和感がない。
また『ブルーロック』と『東リベ』は、一見して平凡に思えた主人公(潔世一/花垣武道)が、ある意味で理不尽な男社会で揉まれ、大きな成長を遂げて成り上がっていく、という物語の構造にも共通点が見られる。綺羅星のごとき多彩なサブキャラクターたちだけでなく、主人公の活躍にカタルシスがあり、きちんと推せるのも両作の魅力だ。凪誠士郎やマイキーが大活躍していても、意外と「もはや誰が主人公なのか……」とはならず、物語の筋が追いやすい。そのことが、少年漫画誌を手に取りづらい読者層が、多くの作品が並ぶ漫画サイトやアプリのなかでも購読を続けられる強みになっているのではないか。
『東リベ』の女性人気は広く語られてきたが、『ブルーロック』については今回の「別冊フレンズ」の反響で可視化された感がある。さらにファン層を広げて「国民的コミック」といえる存在になっていくか、引き続き注目したい。