マンガアプリ「ブックライブfun」独占配信で注目の中国発作品の面白さ 転生・宮廷・復讐モノのおすすめ3選

(左から)『転生したら負け犬に!?』©iCiyuan『一途な王妃』©FANFAN COMIC/animation Dong『復讐の皇后』©lovenovel

 昨今、注目を集めている「ウェブトゥーン」。縦読み&フルカラーを基本としたマンガの新たな表現形式で世界的に人気を博しており、映像化を含めたメディアミックスでブレイクする作品も増えてきた。そんななか、マンガアプリ「ブックライブfun」が中国発の人気作を独占配信しており、これがかなり面白い。

 日本でも人気の「(異世界)転生」というジャンルでトレンドになっているのが、古代中国の宮廷世界を舞台にした作品だ。基本的なストーリーの構成は日本人が読んでも違和感がなく、その上で、中国ならではの文化や発想が活かされているのが刺激的だ。厳格な階級社会のなかでのサクセスやリベンジというカタルシスがあり、現代の知見を生かした“無双”も楽しめるだけでなく、煌びやかな宮廷建築や衣装、風景がフルカラーのリッチな作画に映える。本稿では、内容面でもビジュアル面でも楽しめる作品をピックアップしてみたい。

名医で敏腕スパイが“負け犬お嬢様”に転生 無敵モードで人生の勝ち組に?
『転生したら負け犬に!?』

『転生したら負け犬に!?』©iCiyuan


 名医としても活躍する敏腕スパイーーそんな脅威のポテンシャルを持った女性が、古代宮廷の“負け犬お嬢様”に転生し、「無敵モードで人生の勝ち組を目指す!」という物語だ。
『転生したら負け犬に!?』©iCiyuan


 だらしなくて人望もなく、体はまるまるとふくよかなダメお嬢様・慕無双が、言い寄っていた王朝の四親王・西門康に拒絶され、不遇の死を迎えるところから、物語が始まる。その体に乗り移る形で古代中国の宮廷世界に転生した主人公は、ものの3秒で状況を把握。大まかな設定は“お約束”として処理して、冗長な説明なく物語が進行するとともに、これが主人公の頭の回転の速さを示すエピソードとしても機能しており、冒頭から気の利いた作品だということがわかる。

 宮廷世界で鼻つまみ者だった慕無双だが、中身が入れ替わったことで、名前どおりの“無双”が始まる。医師&スパイとして培ったスキルと機転で、降りかかる困難やライバルたちの権謀術数を軽快に乗り切り、オラオラで冷酷な面もあるが、超ハイスペックな親王・龍墨深の寵愛を受けていくーー。

『転生したら負け犬に!?』©iCiyuan

 宮廷内での足の引っ張り合い……というとドロドロとした印象もあるが、「妖獣」の存在など古代中国らしいファンタジー要素もあり、また主人公がただの善人ではなく、わりと打算的でミーハーな部分があるのも好印象で、軽快に読み進めることができる。龍墨深だけでなく、慕無双の最愛の弟・慕玉珩もビジュアルがよく、サービスシーンも少なくないため、特に女性読者は眺めているだけでも楽しむことができそうだ。

コメディやBL好きの腐女子要素のある復讐モノ
『一途な王妃』

『一途な王妃』©FANFAN COMIC/animation Dong


 コメディ要素のある復讐モノなら、『一途な王妃』が面白い。子どもを助けるために車にはねられて死亡してしまった主人公は、寧王・蘇宸の正妻・葉宋の意識の中で目覚める。蘇宸と新たな側室・南枢のせいで命を失ったという葉宋は、残っているはずの寿命で「仇を取ってほしい」と言い残し、旅立っていくーーというところから、物語は始まる。
『一途な王妃』©FANFAN COMIC/animation Dong


 葉宋として転生した主人公だが、蘇宸の理不尽に腹を立てながらも、比較的ドライに、自分らしく宮廷世界を生きていく姿が魅力的だ。復讐に執着しすぎず、ひとりの女性として毅然と振る舞う姿が痛快で、“王妃らしからぬ”行動が、現代の自立した女性の強さをうまく表現している。その意味で、実はBL好きの腐女子という設定もスパイスになっており、不自由な環境で自由を手にしようと奮闘する姿に共感する読者は多いだろう。
『一途な王妃』©FANFAN COMIC/animation Dong


 また、寧王妃の住処・碧華苑をはじめ、舞台となる宮廷の美しさに目を奪われるのも本作の特徴だ。読者目線では敵役となる蘇宸と南枢ですら、伝統的な衣装を纏った姿はキラキラと美しい。

“人生やり直し系”でも重苦しくない清涼感も魅力
『復讐の皇后』

『復讐の皇后』©lovenovel


 同じく転生×復讐モノで、よりカタルシスのある作品なら『復讐の皇后』をお勧めしたい。主人公は、将軍の夫・霍明城に尽くし、王座に就かせるまで支えてきた商人の娘・南韻。しかし彼女は、霍明城とその妾・祝瑶からの酷い裏切りに遭い、汚名を着せられたまま処刑されてしまう。深い失望と憎しみのなか死んだ南韻だが、目が覚めると霍明城に出会う前の15歳に戻っていたーーという、“人生やり直し系”の人気作だ。
『復讐の皇后』©lovenovel

 転生系の作品では、現代の知識やチート能力を持った主人公も大活躍するが、過去に戻ったことで「未来を知っている/カンニングできる」ことのアドバンテージもそれに負けないくらい大きい。霍明城の性質を知り尽くした南韻は、出会いからすべて計算づくでやり直し、悲劇的な結末を回避し、非道を働いた人々を懲らしめるために機転を利かせていく。宮中での立ち振る舞いは前世の経験からスマートで、信頼を勝ち得ていくのが頼もしい。

『復讐の皇后』©lovenovel

 もっとも、復讐を目的に生きるのは悲しいもので、それだけでは読者が読み疲れすることもある。『復讐の皇后』においては、壮大なリベンジのなかで、南韻のことを黙々と守り続ける、ある人物とのロマンスが清涼剤になり、読者を重苦しい気分から解放してくれるのだ。

 このように3作品取り上げただけでもそれぞれに個性があり、日本や韓国の作品とはまた違う魅力を放っている、中国宮廷世界への転生作品。いまから今後ブレイクする作品を探してみてはいかがだろう。

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