【漫画】海からやってきたのは少女のような海洋生物? SNS漫画「海洋生物少女と研究者」が話題
――この作品は以前に投稿された再掲とのことですが、もう一度ツイートした理由はなぜでしょうか?
中西芙海(以下、中西):連載が最終話のタイミングではあったのですが、特に考えずに再掲してしまいました(笑)。一度載せているので反応は少ないかなと思っていましたが、思ったよりも拡散していただけたなと。今ならもっと描けるところもありますが、当時のアイデアが詰まっていて興味深いですね。
――作品自体の着想は?
中西:たまたまNHKで放映されていたアジアの歌謡祭を実家で見ていたら、東南アジアのどこかの国の代表の方が頭に可愛い飾りを付けていて、それが主人公・ナナの付けているもののモデルなんです。その場で急いでメモしました(笑)。
貝殻に見えたので「貝殻姫」という仮タイトルを付けて、そこからストーリーを膨らませていったんですよ。「貝」だから深海に住んでいるだろう……。でもそれだけでは話が進まないので「海から流れついた」という設定になり、流れつくなら日本がいいなと。それで今の形になったんです。
――きれいなお話ありきだと思っていたので、視覚イメージ起点ということが驚きです。
中西:視覚的な、キャラクターとかから着想していくことが多いですね。キャラから作るのは難しいと言われますが、私はいつもそこから始めてます。あとはひたすら落書きをして、彼らに思いつく限りの動きをさせてみる。効率的ではないかもしれませんが、昔からそういう作り方が好きなんですよ。この読み切り版は制作に1年くらいかかったんじゃないかなと。アイデアはたくさんあるのですが、それが芽を出すまでに時間がかかる感じ。
――最終的にストーリーはどのように固めました?
中西:深く考えずに2/3まで順当に考えていきました。物語は常日頃考えたり、思っていることが作品に反映されがちですね。
――主人公「ナナ」、研究者「堀池」の名前にモデルはいますか。
中西:「堀池」はランダムで提案してくれるサイトで適当に決めました(笑)。ナナちゃんは鳥羽水族館のダイオウグソクムシのように「2号」とか「3号」みたいな名前かなと思って、7番目という意味の「ナナ」ちゃんなんです。研究所の実情も色々リサーチしたのですが、それをリアルに描くと違う話になってしまうのでデフォルメはしていますね。多分、本来のスタッフは白衣を着ていないと思います。あとナナは可愛いけど、可愛すぎないことを心がけました。
――ナナが堀池に水を吹きかける場面が可愛かったです。
中西:ひたすら水の表現にこだわり、その延長でナナが水を吐くシーンをいれました。小さい水のコマでも細かく描き込んだので時間がかかったのを覚えています。もともと海が好きで、水の画像や小川とかもずっと見ていられる性格なんですよ。
――それは自身のお名前に“海”が付いていることに関係ありますか。
中西:どうでしょう(笑)。でも私自身は京都の山に囲まれている場所で生まれ育ったんです。そんな育ちからしたら海は異世界ですからね。そんな小さい頃からの記憶と関係があるのかもしれません。
――記者の描き方も印象的でした。
中西:今見ると少し偏見があったなと思いますが、「未知の世界」を怖く表現した場面です。人間の嫌なところも考えますが、どこかに希望的な観測を持っていたいと今も考えていますね。自分としては明るい話を描きたいというよりも、暗いなかに希望を見出したいというところがあって、その側面は連載版の方で強く出たと思います。そちらがもともとの構想に近いので、ぜひ見比べてほしいです。
――最後に今後の展望をお願い致します。
中西:連載版が一区切りついたので、次は王道の明るいお話を描きたいなと。それでいて陰鬱な話にも興味はあるので、自分の作風を決めつけずに振れ幅の大きい作家になっていきたいです。『ナナのアクアリウム』の単行本も5月に出ますので、そちらもぜひ手に取ってください。
■書籍情報
『ナナのアクアリウム』は5月17日発売!