【漫画】国道沿いの食堂、中にはプロレスリングが!? 異色の人情グルメ漫画『国道食堂』が面白い

【漫画】国道沿いの食堂にプロレスリング?
『国道食堂(1)』(徳間書店)

 「COMICリュウWEB」にて連載中の漫画『国道食堂』第1巻(徳間書店)が、4月13日(月)に刊行された。本作の主人公であるビジネスマン・二方将一が立ち寄ったのは、街道沿いのとあるドライブイン。通称「国道食堂」として親しまれている同店の店主を務めるのは、現役を引退したプロレスラー・本橋十一だった。

 店内にプロレスリングがある異色の食堂を舞台に、さまざまな過去を抱えた登場人物の人生が交差していくーー。優しく、あたたかい人情ドラマが描かれる作品だ。

 本作は小路幸也著『国道食堂 1st season』(徳間書店)のコミカライズ作品。章ごとに主人公の視点が切り替わる原作小説とは異なり、コミカライズでは二方将一を中心に物語が編まれている。コミカライズを手掛けた熊噛舎華氏に原作小説の印象、作画にあたって意識したことなどについて、話を聞いた。(あんどうまこと)

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自分ごとのように感じられる人物がいる

小路幸也『国道食堂 1st season』(徳間書店)

ーーコミカライズにあたって、原作小説を読んで感じた印象を教えてください。

熊噛舎華(以下、熊噛):登場人物のそれぞれの思いが「どこか自分にも当てはまるな」と思いました。作中に登場する人物は、壮絶な過去や死と関わる境遇を抱えている人ばかりですが、きっと読者の方は、必ずひとりは自分ごとのように感じられる人物がいるのではないかと思います。ひとりひとりにどんな過去があり、その過去をどう飲み込んで、どう生きているかについて、すごく考えさせられる作品だと感じました。

 実は私自身、数年前に体調を崩して入院し、医師に「このままだと死ぬよ」と言われたことがありました。そのときに自分の人生ややりたかったことを振り返るなか、病院のベッドの上で創作への意識が芽生え、漫画家を目指し始めました。そんな私の過去もあり、再び演劇と向き合おうとする二方くんに対して思うことは多かったです。

 1度は諦めざるを得なかったけれど、ひょんなきっかけで自分の求めていたことに気づき、動き出した人間の強さと勢い。担当編集さんから声をかけていただいた際、『国道食堂』の物語と、私が本作の連載に至るまでの道のりで感じていたことがリンクしました。

ーー熊噛さんの境遇とともに、第1巻のあとがきで描かれているように「プロレス」「料理」といった本作の特徴も、熊噛さんの作家性とリンクするものかと思います。

熊噛:若い頃にプロレスを観戦したことはありましたが、コミカライズのお話をいただいたあと、大阪まで試合を観に行きました。そのとき感じたプロレスならではの熱さを漫画で表現するため、再び試合を観に行ったり、プロレスに関する雑誌を買いあさったりしました。プロレスのシーンには華があると思うので、本作では原作小説よりもプロレスの場面を増やしています。

ーー二方が演劇に挑むシーンも、プロレスのシーンと同じように華がありますね。

熊噛:プロレスと演劇は、イメージ的には真逆のように見えて、共通点は多いと感じています。プロレス選手は、エンタメとしてお客さんを目一杯楽しませようと考えていて、たとえば悪役側のプロレス選手がお客さんからブーイングを引き出したり、逆に笑いを取ったりと工夫をしています。演劇もまたお客さんを楽しませることに全力を尽くしていて、舞台へ上がった瞬間に表情が豹変する役者さんもいます。

 二方くんも舞台に上がると別人になるタイプだと思います。「演じている」というより「自然とスイッチが入っちゃう」んだろうなと。二方くんが舞台に上がる瞬間の表情の切り替え、普段の表情との落差は意識して描いています。

人は死と直面しても、前へ力強く進める

『国道食堂 2nd season』(徳間書店)

ーー本作では食堂のメニューとして数多くの料理が登場します。とくに印象に残っているメニューは?

熊噛:第1話に登場する大盛りのカレーと餃子のセットですね。カレーに合う餃子ってすごいなと思ったのですが、原作小説では餃子にニンニクは入っていないと書かれているんです。ニンニク特有の臭さはないけれど、ちゃんと旨味がある。だからカレーと一緒に食べても相性がよいのだと思います。

 また第2話で描いた「唐揚げ炒飯」も印象的ですね。唐揚げ、本作であればザンギは嫌いな人が少ないと思います。みんなから愛されている料理だからこそ、本作でも美味しく描かなきゃいけないと思いながら執筆しました。

ーー単行本の描き下ろしイラスト「柔らかわらじカツ定食」「オム焼きそば」「サンマーメン」など、美味しさはもちろん温度を感じる料理の描写が印象的でした。

熊噛:湯気の描き方、そして照りの表現にはこだわっています。美味しそうなものを見ると、料理がキラキラと輝いているように感じますよね。執筆の際にはモノクロで描かなければいけないので、料理のキラキラとした感じや「シズル感」を出すことが難しかったですが、とくに光と影の入れ方を意識しています。また自分が食べて美味しかったものを思い浮かべながら料理を描いています。

ーー原作小説で特に印象に残っているシーンは?

熊噛:まだ単行本には登場していない人物ですが、余命宣告をされた役者さんが登場するお話が印象的でした。死を覚悟しているというわけではないけれど、できる限りのことをして、この世から消えていこうと思っている。彼の姿を見て「人は死と直面しても、前へ力強く進めるんだな」と思い、自分もそうありたいなと感じました。

ーー原作小説では二方や十一はもちろん、さまざまな登場人物の視点で物語が書かれます。コミカライズする際にアレンジしたところは?

熊噛:私がイメージしていたコミカライズは、原作の流れに沿って順当に漫画を描いていくものでした。ただ本作のコミカライズのお話をいただいたとき、原作を読んで「これは難しいぞ」と思い……。担当編集さんとも相談するなか、コミカライズでは誰か1人を主人公として立てることを決め、二方を主人公として物語を描きました。

 作中では原作者である小路先生が書かれなかった部分もありますが、それぞれの視点で書かれる登場人物の動きを参考にしつつ、その裏で二方くんがどう動いていたかを予想しながら執筆しました。そういった背景から本作はかなり異色のコミカライズ作品になったと思います。

ーー今後の見どころについて教えてください。

熊噛:漫画『国道食堂』は全10話で完結する予定で描いています。最終的には二方くんの舞台公演に向かって物語は進んでいきますが、最後にはこれまで出てきたキャラクターたちが登場して、みんなできれいに収まっていくーー。そんなハッピーエンドになるように描いています。

■書誌情報
『国道食堂』
原作:小路幸也 
漫画:熊噛舎華
価格:869円(税込)
発売日:2026年4月13日
出版社:徳間書店

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