『HUNTER×HUNTER』ゴンの復帰はいつになるか “主人公の不在”がさらに長引きそうな理由

※本稿は『HUNTER×HUNTER』のネタバレを含みます。

 昨年12月26日発売の「週刊少年ジャンプ」新年4・5合併号で週刊連載を終え、新しい形での掲載を模索している人気漫画『HUNTER×HUNTER』。ファンは作者・冨樫義博氏の体調を気遣いながら、続きの掲載を心待ちにしているが、現在進行中の複雑なエピソード「カキン王国王位争奪戦」とその背景で走る複数の物語がいつ収束するか想像できず、やきもきする状況が続いている。

 そのなかで考えたいのが、「主人公(ゴン・フリークス)の不在」が長く続いていることだ。約4年ぶりの連載再開に際して、「話についていけない」という読者が続出したのは、複雑な展開が大きな原因だが、主人公が不在で話の筋を追いづらいというのもひとつの要因だろう。ゴンの姿が最後にきちんと描かれたのは、コミックス33巻に収録された345話。「ジャンプ」で言えば2014年6月16日発売号に掲載された回で、実に7年半前になる。そして、ゴンが本編に復帰するまでにはまだまだ時間がかかりそうな気配なのだ。

 簡単に振り返っておくと、ゴンはいまの実力では太刀打ちできない宿敵・ネフェルピトーを倒すため、「もうこれで終わってもいい」という覚悟で自身を無理やり成長させ、打倒を果たした。「覚悟」や「制約」の強さが能力に直結する『HUNTER×HUNTER』の世界で、作中最強レベルの潜在能力を持った主人公が未来を全てを投げ打つとこうなる……という描写に説得力があり、少年漫画史に残るエピソードになったといえる。成長した姿の「ゴンさん」やそのセリフは、ネットミームとして定着している。

 一命は取り止め、しかし念能力を失ったゴンが、父のジンに「全てを捨てる覚悟で戦って普通に戻れたんだぞ それ以上望んだら罰が当たるってもんだ」と諭され、故郷のくじら島に帰って「やれること」を探すーーというのが、345話で描かれた最新の姿だ。

 例えば、『ドラゴンボール(Z)』の主人公・孫悟空など、国民的人気作でも主人公が物語の本筋から不在になる時期はあるが、「修行で力をつけて、仲間のピンチに現れる」など、何かを得て帰ってくることが多く、“復帰”は大きなカタルシスを生む。それがゴンの場合は“療養”に近く、また本筋の舞台も遠く「暗黒大陸」に向かっている巨大な船という状況で、すぐに合流という絵が浮かばない。物語は大きく動きながらハイレベルな戦いが繰り広げられており、「出遅れている」というより「蚊帳の外」だ。“ゴンさん化”にあれほどのインパクトがなければ、空気のような存在になっていたかもしれない。

 冨樫氏なら思いも寄らない方法で復帰させそうな気もするが、一般的な少年漫画として考えると、ゴンが本筋の物語に帰ってくるには「念能力を回復する」「以前よりパワーアップする」「暗黒大陸に向かう理由が生まれる」「暗黒大陸に向かう手段を手にする」など多くのステップが必要だ。「一方その頃」のような形でエピソードが挿入されていく可能性もあるが、それでもゴン中心の物語になるにはかなりの年月がかかるだろう。

 ゴンだけでなく、キルアやレオリオなど、登場する機会のない主役級のキャラクターは多く、381話のトビラ絵で冨樫氏は、ゴンに「あ、オレ 念使えないんだった」、キルアに「オレ、今どこ?」、レオリオに「出せコラ」と呟かせている。作者自身がネタにしている状況で、果たして読者が再びゴンに会える日はいつになるだろうか。鬼才・冨樫義博のこと、最高にカタルシスを感じる形でそれを実現してくれることに期待したい。

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