『HUNTER×HUNTER』幻影旅団の過去編に漂う嫌な予感 “仙水忍&黒の章”クラスの衝撃に備える
「週刊少年ジャンプ」で約4年ぶりに連載を再開し、複雑な展開とテキストの多さで、一部ファンが置いてけぼりになっていた『HUNTER×HUNTER』(冨樫義博)が、新たな展開を迎えている。作中でインパクトを残してきた「幻影旅団」の過去編が、先週11月21日発売号からスタートしたのだ。
本日11月28日発売号の内容についてはネタバレを控えるが、幻影旅団メンバーの過去が細やかに描かれ、その真実が解き明かされつつある。窃盗と殺人を生業とする、無慈悲かつ最凶の集団……という、同胞を根絶やしにされたクラピカの視点に寄り添ったイメージは、これまでのエピソードで変化してきたが、“流星街”で展開する幼少期のエピソードはほっこりさせられるシーンが多く、それだけに嫌な予感しかしない。幻影旅団が現在の姿になるきっかけとなった悲惨な事件が、確実に待ち受けているからだ。
国民的と言えるジャンプ作品で言えば、『ONE PIECE』や『鬼滅の刃』においても、過去のエピソードは胸を締め付けられる、悲しいものが少なくない。ナミがお金に執着するようになった理由も、妓夫太郎と堕姫が鬼に身を堕とした経緯も、悲しみと愛情に満ちた物語として挿入されており、そのキャラクターのイメージをガラッと変化させる力があった。
幻影旅団の過去編は、それ以上のインパクトを持つ可能性がある。展開によっては、彼らの境遇に同情的になるどころか、クラピカが命をかけて追いかけている「クルタ族の虐殺」自体が復讐の結果である……というループ構造になることも考えられ、各キャラクターやこれまで描かれてきたエピソードの捉え方が一変しかねないのだ。
描くのは誰あろう、冨樫義博だ。凄惨な過去編(というほどの長さはないかもしれないが)として、『幽☆遊☆白書』の仙水忍を思い浮かべたファンは少なくないだろう。正義感の極めて強い「霊界探偵」だった仙水は、悪だと信じていた妖怪を欲望のままに扱い、喰いものにする人間の姿を見て、皆殺しにして“闇堕ち”した過去を持つ。人間の悪虐を記録した『黒の章』の内容(断片的に語られたもの)がトラウマになっている読者もいるのではないか。
『HUNTER×HUNTER』においては、そもそも「敵/味方」の概念が相対的だが、そのなかで絶対的な対立軸を持っている幻影旅団のイメージが変わることは、ファンにとって数年、あるいは十数年越しに脳と心を揺さぶられるような体験になるだろう。緊張感を持ちつつ月曜日を待つ、あの頃の楽しさが帰ってきた。