AIの進化にショックを受けたイラストレーターが激白 「技術的に上手いだけの絵はAIに淘汰される」


ベテランの作家がAIを使い始めた!

 漫画家・イラストレーターとして活躍している七瀬葵が、AIを使ったイラストをTwitterにUPしたところ、賛否両論様々な意見が寄せられている。七瀬の絵に長年親しんできたというファンの間からは、否定的な意見も上がっているようだ。

 筆者は七瀬の姿勢は非常に興味深いと思っている。そもそも、七瀬ほど一世を風靡した作家がAIに関心をもっていること自体が驚きである。過去のスタイルに固執せずに新しいツールを使いこなそうと取り組む姿勢は、創作への情熱そのものではないか。

『七瀬葵20周年アニバーサリーコレクション festa! 』(KADOKAWA)

 新しい技術が登場した時は、必ず批判は巻き起こるものだ。かつて漫画制作にスクリーントーンが導入され始めた時も、大御所の一部から、描き込む努力を惜しんではいけない、なるべく使わない方がいいなどという意見も出ていたのだ。

 そして、漫画制作にパソコンが使われ始めた時も、やはり批判的な意見は出ていたのだ。今ではスクリーントーンやパソコンが手抜きだなどと言う漫画家は、まずいないだろう。AIも、おそらく10年、20年先には漫画やイラスト制作において普通に使われるツールになるはずである。

 七瀬は「ほんと絵描きの人は趣味でもいいからAIちょっと触って勉強しといた方がいいと思う」と言っているが、その通りだと思う。AIは漫画やイラストの制作に革命的な変化をもたらす可能性がある。

 漫画の背景やキャラクターのポーズを、ソフトを使って制作している漫画家は多数存在する。AIも同様に多くの人が使いこなすようになると、使い手のセンスで差が表れてくるに違いない。批判的なクリエイターも一度は触ってみて、その真価を知る意味はあるだろう。

なぜAIに衝撃を受けたのか

 さて、AIに関心を抱く人がいる一方で、ショックを受けたと話す人もいる。筆者の知り合いのあるイラストレーターは「AIの進化の凄さにやる気をなくしてしまった」と話す。彼は様々な場面でイラストを手掛け、Twitterのフォロワー数も多い売れっ子だ。匿名を条件に話を聞いた。

――AIのイラストを見て、率直にどう思われましたか。

「最初は、AIをバカにしていました。どうせ、そんなに大したものは作れないだろうって。ところが、最近Twitterに流れてくるイラストを見ると、えっ、これがAIなの??! と驚くことが多くなりました。そして、ある日見て、いいなと思ったイラストがAIだったんです」

――私も、AIが描いた絵を純粋に凄いなと思いました。

「これまで何時間も時間をかけて描いてきたものが、AIなら一瞬でしょう。しかも、AIの方がちゃんと流行りの絵柄を学習しているし、目を引く絵を作るのが上手い。これまで自分が時間をかけてやってきたことは、何だったんだろうと思ってしまいました。AIが描いた絵を見て、私は流行りの絵を追いかけてきただけなんだと自覚したのが、一番辛い体験でした。私の絵は、技術はそれなりにあってきれいだけれど、個性では劣っている。だからAIに負けるんだと思いました」

――絵に個性がないと。

「そうです。それは山内さんが、たくさんの絵を並べた時に、私の絵は埋没してしまうと言っていたでしょう」

――そんなこと言いましたっけ(汗)。

「でも、その通りなんですよ。今や、見栄えのする絵を描く人は、Twitterやインスタを見ればいっぱいいます」

――しかし、これまで培ってきた技術を否定しなくてもいいと思います。

「そうでしょうか。私が今描いている絵は、実は本来のタッチではないんですよね。私は手描きだと線がガタガタになるんです。でも、CGならソフトが自動的に線を補正して、きれいにしてくれる。だから、AIではないけれどもソフトの技術に凄く頼っている部分があって、これが自分の絵なのかと自問自答しています」

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