“戦闘員D”から“巨人のおじさん”まで 現在連載中で斬新なアイデアを盛り込んだ気鋭のヒーロー漫画3選

主人公を応援したくなるヒーロー漫画

 『僕のヒーローアカデミア』(堀越耕平)、『ワンパンマン』(原作:ONE/漫画:村田雄介)、『チェンソーマン』(藤本タツキ)と、バリエーション豊かでアニメ化も映える“ヒーロー漫画”が人気を博している。

 “無個性”というハンデを乗り越えて立派なヒーローに成長した緑谷出久も、漫画史上最強クラスの戦闘能力を持ったサイタマも、ヒーローらしからぬ性格で憎めないデンジも魅力的だが、他にも応援したくなる主人公が活躍するヒーロー漫画は少なくない。本稿では、連載中に追いつきたい気鋭の作品と主人公たちをまとめてみたい。

『戦隊大失格』/戦闘員D

 12月6日にテレビアニメが発表された、「週刊少年マガジン」の人気連載『戦隊大失格』。『五等分の花嫁』で知られる作者・春場ねぎが描くキャラクターはどれもフックがあるが、本作の主人公は「戦闘員D」というスーパー戦隊のやられ役だ。

 本作では、スーパー戦隊(竜神戦隊ドラゴンキーパー)と怪人軍団の戦いがショーアップされた娯楽になっており、すでに幹部を失っている怪人軍団は、負けることを義務付けられている。やりたい放題のヒーロー戦隊をぶっ潰すため足掻く戦闘員Dが、カッコわるくてカッコいい。

 ちなみにテレビアニメ版の監督は、『TIGER & BUNNY』や『いぬやしき』で知られ、スーパー戦隊シリーズのキャラクターデザインも手掛けてきた、さとうけいいち氏だ。ヒーロー作品を熟知した監督が、これまでフォーカスされてこなかった「戦闘員」をどう描くか、期待が高まる。

『ゴダイゴダイゴ』/後醍醐ダイゴ

 マンガアプリ『少年ジャンプ+』で連載中のインディーズ作品『ゴダイゴダイゴ』(コウノスケ)の主人公・後醍醐ダイゴも、ヒーロー漫画の主人公として異色の存在だ。30年間、東京を怪獣から守るために戦い続けてきた巨大なおじさんヒーローで、戦闘に際して巨大化するのではなく、常に大きな身体であるため、生活を維持する資金繰りに困っている。

 こちらも怪獣とのプロレスバトルが一定程度、エンタメ化している世界で、その流れに乗れない実直なヒーローであるダイゴは、市民や他のヒーローからロートルとして軽く見られている部分がある。しかし、その優しさと怪力でブレずに戦い続ける姿は、誰よりもヒーローらしい。

 作品の世界観には謎が多く、空から唐突に現れ、ひとしきりヒーローとプロレスをした後、風船のように膨らんで空に帰っていく怪獣の存在、なぜかダイゴが狙われる理由など、ほっこりしたムードのなかに不穏な空気も漂う。アニメ化にも期待したい作品だ。

『戦隊レッド 異世界で冒険者になる』/キズナレッド(浅垣灯悟)

 「月刊少年ガンガン」で連載中の『戦隊レッド 異世界で冒険者になる』(中吉虎吉)は、ヒーローモノ×異世界転生というトレンドを押さえた話題作だ。主人公は、悪の組織との最終決戦で、“絶縁王”の命と引き換えにこの世を去った「キズナレッド」こと浅垣灯悟。戦隊モノのレッドらしい真っ直ぐな熱血漢で、素直に応援できる存在だ。

 灯悟が「戦隊モノのお約束」がない異世界で奮闘する姿が微笑ましく、現世と変わらず「人との絆」を求め、困っている人たちを助けようとする姿に胸が熱くなる。「お約束」をめぐるメタ的な楽しさと、キャラクター造形に馴染みのある“僕らのヒーロー”が活躍するカタルシスのある良作だ。

 これらの作品を含め近年のヒット作に共通するのは、形式の確立した「ヒーローもの」の構造を生かしながら覆す、新たなアイデアを盛り込んでいることだ。2023年以降も、新たなヒーローとアンチヒーローの活躍に期待しよう。

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