漫画と現実が逆転!? 『サンダー3』絵柄の落差で描く、混濁した世界観
何事も“つかみ”が大事と言うが、『サンダー3』(講談社)の第一話を読んだ時は、見事なつかみに「やられた!」と驚いた。本作は月刊少年マガジンで池田祐輝が連載している漫画で、現在はコミックスの第1巻が刊行されている。
本作は、どこにでもある家族の日常からはじまる。主人公は兄のぴょんたろう。妹のふたばはぴょんたろうに懐いていて、トイレの中まで入ってくる。両隣の家に住んでいる二人の少年とは仲良しで、いつもどうでもいい話をしている。その日はバレンタインデーだったが三人ともチョコレートをもらえず、がっかりしていた。
父は漫画家で、タイトルの『サンダー3』とは、彼が描いている漫画のようだ。まだ、アニメ化はされておらず、ヒット作ではないようである。
※以下、ネタバレあり
ある日、三人は教師のドクの家に遊びに行く。ドクは雑誌「ムー」の通販で8万円で買った、異次元と繋がるディスクを持っていた。しかしこのディスクはゲーム機のPS5でしか機動しないらしい。ぴょんたろうはディスクを借りて、家にあるPS5で再生する。テレビにはリアルな風景が映る。
本作の絵柄は等身の低い記号的なキャラクターで、風景も簡略化されている。一方、テレビに映る画面は写真のようなリアルなものだ。「8K?」と、子どもたちは解像度の高い映像を指して言うのだが、現実とされる主人公たちの絵がディフォルメされた記号絵なので、この時点ですでに奇妙な違和感がある。
その後、モニターからリアルなトンボが出てきて、こちらの世界で飛び回る。トンボはすぐにモニターの世界へと戻っていくが、妹のふたばとペットの犬はトンボを追いかけて、モニターの中に入り込んでしまう。そこは文字通りの意味でリアルな世界。背景は解像度の高い写真のような映像でふたばと犬だけが漫画的なキャラクターとして浮き上がっている。そんなふたばを観た人々は、アニメや漫画が動いていると勘違いする。
この世界の人々は、等身は高く写実的に描かれているのだが、その中には人間とは思えない不気味な存在が混ざっている。そして上空は、無数の宇宙船が埋め尽くしており、やがて不気味な存在が宇宙人であることが判明する。
その後、ふたばを探すため、ぴょんたろう達3人もモニターの世界に入る。ふたばは宇宙船にさらわれ、人に向けてミサイルが容赦なく飛んでくる。しかし、3人には攻撃は通じない。どうやらこの世界の原子レベルは手塚たちの世界と比べて脆いらしく、彼らはスーパーパワーを発揮できるようだ。