「週刊少年ジャンプ」2022年はチャレンジの年だった? 新連載に感じる“世代交代”への意欲

 本日11月28日発売の「週刊少年ジャンプ」で、4号連続となる新連載の第3弾『イチゴーキ!操縦中』(林聖二)がスタートした。

 『HUNTER×HUNTER』の約4年ぶりとなる連載再開、最終章を迎えている『ONE PIECE』や『僕のヒーローアカデミア』の盛り上がり、看板作品に成長した『呪術廻戦』の好調に、アニメ化が迫る『僕とロボコ』や『アンデッドアンラック』、『マッシュル-MASHLE-』などの躍進と、見るべき点の多い、現在の「ジャンプ」。そこに新風を吹き込むべく、尖った新連載が投入されている。

 11月14日発売号でスタートした『一ノ瀬家の大罪』は、マンガアプリ「少年ジャンプ+」で大ブレイクした『タコピーの原罪』の作者・タイザン5の新作。全員が記憶喪失になった家族のサスペンス的ホームドラマで、前作同様、可愛らしい絵柄とギャップのある残酷なストーリーに、早くも注目が集まっている。

 続いて11月21日発売号から始まったのが、原作・西尾維新、作画・岩崎優次による『暗号学園のいろは』だ。西尾維新はライバル誌の「週刊少年マガジン」で連載中の『化物語』も手がけており、少年マンガという分野で、ヒットメーカーとしての存在感をさらに高めている。尖ったキャラクターたちと気の利いた謎解きは、年齢を重ねた読者にも響きそうだ。

 そして今週号では、ご当地ネタをうまく取り入れ、異例の早さでアニメ化された人気作『ジモトがジャパン』で知られる林聖二の新作コメディ『イチゴーキ!操縦中』がスタート。さらに、12月5日発売号からは、第15回ジャンプ近未来杯の優勝作品『人造人間100』(江ノ島だいすけ)が満を待して連載化される。2作品とも他にない個性があり、長期連載も期待される新作だ。

 2022年の新連載を振り返ると、チャレンジングな1年だったことがわかる。「落語」という派手とは言えないテーマながら、新時代の女性主人公が眩しく、着実に人気を高めている『あかね噺』に、ぶっ飛んだ設定で優しい日常を描き、瞬く間に人気作となった『ルリドラゴン』(現在休載中)。常識を蹴飛ばすようなヒロインが魅力的な『大東京鬼嫁伝』、無邪気なバディによるファンタジーという新規軸を見せている『ギンカとリューナ』も、好評連載中だ。

 残念ながら連載が終了してしまった作品も、意欲作と言えるものだった。人の感情を描くのが上手く、スポーツから吹奏楽まで、丁寧に物語を紡いできた神海英雄が惑星規模の純愛に挑んだ『地球の子』。この世のあらゆる情報を検索できるスマホを巡るミステリー/サスペンスで、『デスノート』を思い出すような知略戦の楽しさを感じさせてくれた『すごいスマホ』に、こちらも地球規模の壮大さで、家族愛と熱いバトルが魅力的だった『ALIENS AREA』。単行本で読み返してみれば力のある意欲的な作品たちで、「週刊少年ジャンプでの連載」というハードルの高さを感じるところだ。

 ちなみに、2020年連載開始で、現在も本誌に掲載されているのは『アンデッドアンラック』『マッシュル -MASHLE-』『僕とロボコ』『高校生家族』『SAKAMOTO DAYS』で、本誌の中核をになっている。『アンデラ』『マッシュル』『ロボコ』はアニメ化も迫る。同じく2021年の連載開始作品では、『逃げ上手の若君』『ウィッチウォッチ』『アオのハコ』『PPPPPP』と、毛色の違う良作が揃っていた。

 冒頭にも記したように、『HUNTER×HUNTER』の連載再開というオールドファンにも嬉しい出来事はあったが、大看板の『ONE PIECE』がクライマックスを迎えつつあるなかで、次世代の意欲作が次々と投入されているのは頼もしい。果たして2022年にスタートした(スタートする)チャレンジングな新連載たちは、1年後、2年後にどんな作品に育っているのか、「少年」ではまったくないジャンプファンの筆者も、「もうターゲットではない」ことをわきまえながら、毎週の楽しみにしたい。

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