世界が注目する韓国絵本『パライパンマンマ』 思いやりの気持ちが心に響く愉快な“友達づくり”の話

世界が注目する韓国絵本

 いま絵本ファンのみならず、感度の高い「本」好きからも大きな注目を集めている韓国絵本。11月16日(水)に発売された『パライパンマンマ』(ポプラ社刊)も話題作の一つ。ことば遊びの楽しさと、ユーモアたっぷりの可愛いキャラクターたちが活躍する話は、子どもから大人まで幅広く楽しめる親しみやすさを持った一冊だ。

 本作は、イタリアで行われる世界最大の児童書見本市「ボローニャ・ブックフェア」で、2021年にクリエイティブでデザイン性に優れた作品に贈られる「ボローニャ・ラガッツィ賞」のコミック部門最優秀賞を受賞。

イ・ジウンの作品は、個性豊かなキャラクターたちがシンプルな筆致で、素晴らしく細部まで描きこまれている。楽しさと笑いの中にも、私たちがどのように他者を迎え入れ、受け入れていくか考えるきっかけを与えてくれる物語だ。―――審査員評

 小さなマシュマロンたちがのんびり暮らす村に、ある日、意味不明の「パライパンマンマ」という言葉が聞こえてきた。その声の主は、大きくて黒いモジャモジャ。マシュマロンは、自分たちがモジャモジャに食べられてしまうのではないかと恐れ、戦うことを決意した。しかし、ひとりの小さなマシュマロンが疑問を投げかける。「ほんとに モジャモジャは ぼくらを たべるつもりなんでしょうか?」モジャモジャに近づき、話をよく聞いてみると……。

 登場キャラクターであるマシュマロンたちは、最初モジャモジャの言葉が分からず、自分たちを食べるのではないかという疑念から争う姿勢を見せる。しかし、本当に相手はそう思っているのだろうか? と気づき始め、モジャモジャへ歩み寄ろうとする。これは、言葉の通じない他者同士が、どうやって相手を理解して関係を築いていくのか、という大きなテーマを感じさせる。そのようなテーマを、堅苦しさを微塵も感じさせることなく、大きなユーモアですんなりと読ませる、あたたかで包容力を持った作品だ。

 翻訳は、申明浩と広松由希子が担当。原書の韓国語の意味と響きを深く理解する訳者により、ことば遊びの要素のあるストーリーを日本語でも存分に楽しめる。

 話題となっている理由は他にもあり、それは発売前に内容の一部が読める「限定試し読み版」を配布し、絵本を口コミで応援してくれるサポーター制度を導入していること。多くの読者から応募があったようで、次々と応援の投稿がSNS上にアップされている。気になったらチェックしてみよう。

書誌情報

『パライパンマンマ』
作・絵:イ・ジウン
訳:申 明浩
定価:2,178円(10%税込)
サイズ:218mm x 299mm
ページ数:64ページ

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