大学ではマンガをどう教えている? 日本にひとつしかない“マンガ学部”の授業に潜入してみた

マンガはグローバルになっている

  それにしても、成績はどうやって決めるのだろうか。おおひなたが言う。

 「作品の評価基準がしっかり設けられています。画力、ストーリー、キャラクター、テーマなどの項目を定め、5人の教員が採点して合計点で評価します。幸いにも、新世代マンガコースの教員は専門がそれぞれ違うので、一つの傾向に偏ることなく厳正に評価できていると思います」

『若ゲのいたり』『うつヌケ』や、手塚治虫風の画風で知られる田中圭一も教員を務める。いつも際どいネタを展開し、手塚るみ子とTwitterでバトルを展開するのはおなじみの光景だが、授業中には真摯に学生の相談にのって、プロットやネームに適切なアドバイスを行っていた。

  取材して驚いたのは、授業中に外国語が飛び交っていたことだ。聞けば、クラスの62人中、半数くらいが中国、韓国などの出身者であるという。話を聞くと、「マンガの最先端である日本で学びたい」という動機で、入学を志望したという学生もいた。こうした傾向はアニメ系の専門学校でも増えているようである。マンガに対する関心がグローバルなものになっていることを実感させられた。
成績の良かった上位30名は、毎年制作される進級制作本にまとめられる。

教員も現役のマンガ家である

  先ほど、くろなゆたから環境という話が出たが、学生にとっても「第一線で活躍する現役のマンガ家から直接教えを受けることができる点」は大きな魅力なのだという。

  確かに教室の中におおひなたごう、田中圭一の2人がいるなど、マンガ好きである筆者にとってもたまらない環境だが、それだけではない。おおひなたも教員として教える側でありながら、大学を出れば一人のマンガ家として編集者と打ち合わせを行っているのである。

 「僕も今、編集さんと打ち合わせをしているんですが、なかなかネームが通らなくて苦労しています」と、おおひなたが苦笑しながら言う。こうしたプロの苦悩を学生が身近で感じられることも、京都精華大学の魅力になっていると筆者は感じた。授業終了後に学内のカフェに行くと、マンガのネームを描きながら議論を交わす学生の姿があった。大学全体が、「トキワ荘」のような環境なのである。

京都精華大学のカフェの食事は、大学とは思えないほど美味であった。学生がうらやましい!

  京都精華大学マンガ学部は、マンガの最先端を仲間たちとともに学ぶことができる理想的な環境だと感じた。将来、マンガ家を目指している学生は、入学を検討してみてはいかがだろう。おおひなたが受験生に向けて、メッセージを送ってくれた。

 「私が長年学生を見てきて思うのは、成功する学生ほど高い意欲を持ち続けているということです。自分で限界を決めない、ダメ出しにめげずに人の意見を聞く柔軟性を持っている、課題の主旨を理解して締切を守る、こういったことを持続させられる学生は確実に伸びます。上手い下手よりも、とにかくマンガが描きたくて描きたくて仕方がないんだ! という方はぜひ、新世代マンガコースでマンガ漬けの日々を送りましょう!」

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