『HUNTER×HUNTER』複雑すぎる展開は冨樫先生の狙い? 休載挟んで続く天才漫画家の“挑戦”

 「週刊少年ジャンプ」で連載中の『HUNTER×HUNTER』(冨樫義博)の最新刊となる37巻が11月4日、発売された。約4年ぶりの連載再開&新刊に歓喜するファンが多い一方で、「暗黒大陸」への航海、カキン王国の王位継承戦、幻影旅団VSヒソカなど、複数の物語が複雑に絡み合いながら進行しており、新キャラクターも無数に登場することから、「話に追いつけない」という読者も少なくないようだ。

 現在進行している「暗黒大陸編」がスタートした32巻以降の単行本を読み返し、37巻をあらためて読めば、緻密に構成された物語と、緊張感が続く展開に没入することができる。しかし、いくら何でも登場人物が多すぎるのでは……という疑問はもっともで、これは冨樫氏が意識的に取り組んでいることだ。

 2016年8月20日刊行の『ジャンプGIGA 2016 vol.2』(電子書籍化されており、現在も購読可能だ)に、冨樫氏と『NARUTO -ナルト-』作者・岸本斉史氏による「クリエイティブの秘訣お答えしますスペシャル」と題された対談が掲載されている。そのなかで冨樫氏は、話作りのセオリーの中に収めて物語を描くことができず、「結末の見えない方向に話を進めたい」とした上で、「今回のシリーズはシンプルに、ものすごく人数を増やしたらどうなるだろうっていうのを、とにかく極端にやってみた」「それを意識しながらあえてやって、破綻しなかったらおもしろいなと」と明かしている。

 読者がついていくのに精一杯になるほどのキャラクターを破綻なく動かし、大きな物語も、そのなかに含まれる個別の小さな物語も面白く読ませるというのは、至難の技というほかない。単なるモブではなく、それなりに存在感のあるキャラクターが大勢登場すれば、セリフやナレーションなど文字での解説の必要性も増し、それも読者の“読み疲れ”を誘発していると見られるが、それでもファンが離れないのは、冨樫氏への絶大な信頼によるところだろう。

 いずれにしても、「ただ描いてくれるだけでいい」とまで言うファンが少なくないなかで、冨樫氏はいまも、より面白い物語を作るための実験と挑戦を続けている。単行本を読み返し、全体像を把握する時間がない人は、ここは「そういうものだ」と考えて、自分が気になるパートーー例えばクラピカの活躍や、幻影旅団とヒソカの戦いなどに注目しつつ、次の展開を待つのがいいかもしれない。

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