『週刊少年ジャンプ』複製販売で逮捕 漫画雑誌の無断複製が後を絶たない理由とは

 2022年11月8日、石川県津幡警察署や県警察本部サイバー犯罪対策課は、権利者に無断で複製した漫画雑誌を販売していたとして、東京都墨田区の50歳の男性を著作権法違反(みなし侵害)の疑いで逮捕した。男性は今年4月5日、集英社に無断で複製された漫画雑誌『週刊少年ジャンプ』の1984年第51号を、ネットオークションを通じて販売。18万1000円で落札されたという。

 18万1000円という金額を聞いて、驚いた人も多いだろう。週刊少年ジャンプの1984年第51号は、世界中に探し求める人が多い、知る人ぞ知る伝説の号なのだ。いったいなぜか。鳥山明の『ドラゴンボール』の第1話が掲載され、連載が始まった号と説明すれば、納得していただけるのではないだろうか。ましてや、漫画雑誌は読み捨てられることが多く、特にきれいな状態で残っているものは非常に少ない。プレミア価格も納得というものである。

 現在、リアルタイムで週刊少年ジャンプの黄金期を読んでいた子どもが大人になり、1980~90年代の漫画雑誌や単行本が、コレクションの対象になりつつある。大人が子ども時代を懐かしみ、コレクターになるのは自然な感覚だ。子どもの頃に読んでいた、欲しかったけれどお母さんに買ってもらえなかった、持っていたけれどなくしてしまったなど、コレクターによって事情は様々である。特に、発売日に書店で手にした時の興奮を再び体験できる雑誌はコレクターズアイテムとして人気が高まり、価格が高騰している。

 もっとも、すべての号にプレミアがついているわけではない。古いジャンプが物置にあるから、売れば高いんじゃないかと思うのは、早とちりだ。ほとんどの号はチェーンの中古書店では買い取ってもらえないし、中古漫画の専門店でも買い取ってもらえないケースが少なくない。専門店の販売価格も数百円、高くても千円前後である。プレミアがつくには、『ドラゴンボール』のように、ビッグヒットとなった漫画の連載開始号など、何らかの節目である必要があるのだ。

 今度の見通しとしては、『鬼滅の刃』の連載が始まった週刊少年ジャンプの2016年第11号などは、まだネットオークションでも5千円前後での取引だが、将来的には高騰する可能性は十分にあるといえよう。

 ほかに有名な例では、手塚治虫の『ブラック・ジャック』が掲載されている『週刊少年チャンピオン』が挙げられる。ブラック・ジャックといえば医学漫画の金字塔であり、手塚の傑作の一つであるが、様々な大人の事情により単行本に収録されていない話が存在する。そうした話はもちろん当時の雑誌でしか読めないため、以前からプレミア価格で取引されている。

 さて、こうしたプレミア雑誌や単行本は、これまでは中古漫画の専門店など通じ、熱心な愛好家の間で取引されていた。そうした場では、そもそも店側の鑑定を経ているため、海賊版を掴まされることは基本的になかった。

 ところが、近年はフリマサイトの普及に伴い、個人売買を通じて海賊版を手にしてしまうケースも多く、社会問題化している。ブランドバッグや高級腕時計は早くからこうした搾取、詐欺のターゲットにされていた。ヴィンテージコミックや雑誌も近年の著しい高騰により、ターゲットになり始めたということなのだろう。

 フリマアプリは、実物を手に取って確かめることができない。そのため、様々なアングルから写真を送るように指示するのが有効な策だが、相手の手口も巧妙なものである。本物の写真を用意し、証拠として送る悪質なケースが多い。

 筆者は腕時計や漫画家のサイン色紙の愛好家であるが、こうしたコレクションアイテムをフリマサイトで買い求めるのは大きなリスクと考え、一度も買い求めたことがない。できることであれば、貴重かつ高額な品物は、専門店の店頭で買い求めることをおすすめしたい。

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