野球漫画は冬の時代? 『ダイヤのA』『フォーシーム』連載終了、『ブルーロック』『アオアシ』などサッカー漫画が隆盛

野球漫画は冬の時代に?

 「ビッグコミック」で連載されていた人気野球漫画『フォーシームNEXT』(さだやす圭)が、10月25日発売の同誌にて最終回を迎えた。そして、26日発売の「週刊少年マガジン」48号では、アニメも好評を博してきた『ダイヤのA actII』(寺嶋裕二)が幕を閉じる。

 『フォーシームNEXT』は第一章となる『フォーシーム』の開始から数えて約9年、『ダイヤのA actII』は『ダイヤのA』を含めて約16年続いた長期連載であり、「野球漫画」というジャンルを語る上で、ひとつの象徴的なタイミングになりそうだ。

 “人気の低迷”が連載終了の要因とは言えないと断っておくが、「野球漫画」は厳しい時代を迎えているのかもしれない。その歴史は戦前までさかのぼり、野球人気が爆発した1960年代以降は、『巨人の星』(原作:梶原一騎・漫画:川崎のぼる)や『ドカベン』(水島新司)の例を引くまでもなく、多くの名作が漫画業界を牽引する原動力のひとつになってきた。90年代以降も、『H2』(あだち充)や『ROOKIES』(森田まさのり)、『MAJOR』(満田拓也)など多くの人気作が誕生し、『ストッパー毒島』(ハロルド作石)や『ONE OUTS』(甲斐谷忍)、『グラゼニ』(原作:森高夕次、漫画:足立金太郎)に『おおきく振りかぶって』(ひぐちアサ)など、個人的にも大好きな作品は多いが、近年では雲を晴らすようなヒット作が生まれていない状況だ。

 国内最大級の電子書籍ストア「ブックライブ」による「少年マンガ・青年マンガ 上半期ランキング2022」(集計期間:2022年1月1日~5月31日)においては、発表された50位までに野球漫画の姿がない。創作のモチーフとしても、あるいは実際の競技としても、「野球」は「サッカー」と比較され続けてきたが、同ランキングでは5位に『ブルーロック』(原作:金城宗幸:漫画:ノ村優介)、6位に『アオアシ』(小林有吾)と、アニメ化も話題のサッカー漫画2作がランクインいるのが対照的だ。

 社会状況として、野球人気を支える大きな柱のひとつである高校野球/甲子園が、コロナ禍の影響で厳しい状況が続いていたこと、米メジャーリーグで“漫画を超える”活躍を続けている大谷翔平の存在が、野球漫画にとって追い風となっているのか、向かい風になっているのかというのも、考えたいポイントだ。野球とサッカーを比較するのであれば、2022年はW杯イヤーということもあり、話題性にも大きな差がある。

 そのなかで、現在もフックのある野球漫画が多くの読者を獲得していることも、忘れてはいけない。『タッチ』から約30年後の明青学園野球部を舞台とした『MIX』(あだち充)、名門・PL学園出身で、甲子園への出場経験も作者が、前時代的とも言える厳しい野球部を描く『バトルスタディーズ』(なきぼくろ)、記憶喪失により素人になった中学硬式野球のスター・要圭を中心に、野球をやめた天才たちの活躍を描き、漫画配信サイト「少年ジャンプ+」で好評連載中の『忘却バッテリー』など、さらなる飛躍を願いたい作品は多い。

 野球漫画は冬の時代を迎えるのか。ひとつのモチーフも多様な切り口で作品化されている現在、ジャンルを一括りで語る時代ではないのかもしれないが、いちファンとして、野球漫画というシーンに大谷翔平を超えるスターが登場することに期待したい。

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